616: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/03/28(火) 03:41:19.05 ID:T7wuw/an0
「タエ…よっちゃん……それに、おじいちゃんも……。」
今は亡き、北上の友人や親族。
それらの人々が次々に現れては、笑顔で北上に手を振り、そして彼方へと消えて行く。
そんな中、聞き覚えのある声が彼らの耳に触れた。
“ケイ君、娘を頼むよー。泣かせたら化けて出てやるからなー!はっはっはっ!”
“……ユウ、幸せにね。ケイ君、よろしくお願いします。”
「お父さん…!お母さん…!」
“姉ちゃん、ケイ兄……またな!!”
「コウちゃん………うん!またね!」
北上は、彼らを笑顔で見送っていた。
そこにかつての悲しみはなく、心を込めて、送り届けるように手を振った。
“全く世話ばっかりかけんだからさー……じゃあね、アタシ。”
「あんたは…?ふふ、まーいーや。じゃあね!」
最後に聞こえた声。
それはかつての彼女自身だったのか、それとも、艦としての北上の魂だったのか。
それは結局分からないまま。
だが、彼女はその光にも、心からの手を振っていた。
やがてそれらの光も消え、倉庫には元通りの薄闇が広がるばかり。
だが、元通りでないものもあった。
「缶、砕けてもうたなぁ……ま、これでうちらも、もう艦娘やないって事やな?なぁ、ユウ?ミユ?」
「あれ龍驤さん、アタシ達の本名知ってたの?」
「あのなぁ…これでもうちの鎮守府やったら、正確には艦娘兼少尉なんやで?キミらの本名ぐらい知っとるわ。
まぁええわ…せやからキミらも、アカネって呼びや。」
「アカネさん!」
「アカネおばさん!」
「こらぁユウ!!お前は営倉送りやー!」
こうして彼女達の戦争は終わり。
艦娘としての彼女達もまた、終わりを迎えた。
ここからが、新たな日々の始まりとなるのだ。
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