12:名無しNIPPER[saga]
2016/07/09(土) 01:04:50.41 ID:Px08eZlJ0
「出席するのか」
「するよ、おめでたいしね」
「じゃあ、一緒に行くか?」
彼女のスプーンが止まった。
怪しそうにこちらを睨んでくるが、眠たげな瞳がさらに眠たそうにしているようにしか見えない。
慣れないことをするべきではないのに、今日の僕は似合わない言葉ばかり口をついてしまう。
突き刺さる視線を無視して、自分の未来へ想いを馳せてみた。
やりがい、周りにいる人、目標、結婚。過去の先輩が困ったように笑う姿が脳裏に浮かぶ。
僕の過去と今を比べてみると、状況は大きく変わっているけれど、これから先何か変わっていく未来は何も想像できなかった。
ただ、彼女だけはいずれ僕の目の前から消えていくのだろう。
アイドルとして成功させてあげることができなかった、だから彼女に責任を感じているなんて、僕のワガママだ。
そんなことは随分前に自覚している。
それでもこだわってしまうのは、いずれ終わってしまう今がたまらなく愛おしいものだと気付いているのかもしれない。
「そうだ、困ったことがあったら何でも相談しろよ」
惑わないように焦点をぼかすと、彼女の輪郭だけが眼に焼きついた。
「ああ、なんなら、恋愛相談だっていいぞ」
彼女が物凄く嫌そうな顔をする。
止まっていたスプーンからクリームが溶け、うさぎのぬいぐるみにこぼれた。
うさぎはいつも、僕と彼女の間を隔てていた。
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