31: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:35:32.02 ID:z6mFNZbg0
「う〜ん、そうねぇ。難しいけど、きっと小梅にも分かるときがくるわよ。大きくなったらね」
「わかんない!ず〜っとわかんない!」
32: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:36:57.07 ID:z6mFNZbg0
「ねぇ、そのお墓の人の名前はなんて書いてあった?」
「わかんない。漢字だから読めなかった。お母さん知ってるの?」
33: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:40:24.64 ID:z6mFNZbg0
彼は私たちの町、熊本県甲佐町に生まれた。
昭和9年に陸軍士官学校を卒業し、満州事変で出征した。
34: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:42:26.70 ID:z6mFNZbg0
辛うじて命を取り留めたものの、彼は一生自力では立てない体となり前線から退くことになる。
昭和14年、地元熊本に戻った彼は結婚し、やがて2人の娘を授かった。
35: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:44:52.45 ID:z6mFNZbg0
すべては誰かに聞いた話、本で読んだ知識だ。
私とは関係のないどこか別の次元の話だった。
36: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:47:31.17 ID:z6mFNZbg0
私の命は深く濁流の中に飲み込まれた。
いつの間にか八九式に乗っていた私はいなくなっていた。
37: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:49:26.05 ID:z6mFNZbg0
悲しい声が聞こえる。
一面の真っ白な雪原、もしかしたらここは雲の上だろうか。
38: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:52:59.14 ID:z6mFNZbg0
震えた声が聞こえる。
みんなが一様に同じ言葉を発していた。
39: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:54:44.25 ID:z6mFNZbg0
目を覚ました私はみんなの抱擁でめちゃくちゃにされた。
そのときでも私はまだ思考が明瞭ではなく、白いテントに下げられたランプの光をただ眺めながらここはどこなのか考えていた。
40: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 14:56:56.03 ID:z6mFNZbg0
「赤星さん……よかった……本当によかった……」
彼女は両方の瞳からたくさんの涙を流しながら、私の手を胸に抱いていた。
41: ◆JxFTtO5TBE[saga]
2016/07/17(日) 15:02:16.00 ID:z6mFNZbg0
そのあとの出来事はあっという間に流れていった。
事故の間意識を失っていた私だけが地上の病院に送られた。
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