1:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:20:23.33 ID:fILZBOzpo
「あっれー? っかしーなー……」
納戸を開けた瞬間、俺はもう既にうんざりだったが、こればかりは諦められない。
菓子箱や百貨店の袋の山を切り崩して、黙々と発掘作業を進めていく。
「パパ、何やってんの?」
「んー? お宝探し」
「お宝!? マジ!?」
「あながちウソでもないかもなぁ」
オークションサイトに出せば定価よりちょっと上くらいは付くかもしれない。
二十年……正確には十五年くらいか? それを考えるとそんなもんだろう。
「樹里も手伝ってくれよ」
「分け前くれる?」
「はは。いいとも」
「やった!」
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2:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:21:53.97 ID:fILZBOzpo
樹里の前に未開封の箱を積み重ねた。
薄く埃が舞って、差し込んだ日光が柱を見せる。
「で、何探してんの?」
3:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:23:06.01 ID:fILZBOzpo
いつだってそうだった。
女子は男のロマンをこれっぽっちだって分かってくれないんだ。
昆虫採集、化石発掘、真剣勝負。
男の子ってのはな、毎日が冒険に飢えて仕方の無い生き物なんだよ。
4:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:23:56.32 ID:fILZBOzpo
「……あった」
「お宝!?」
5:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:24:58.70 ID:fILZBOzpo
「懐かしいなぁポケモン。小学生時代の中心だったよ」
「え、ポケモンてそんな昔からあったん?」
6:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:27:10.81 ID:fILZBOzpo
「このCD、要るかい?」
「要らなーい。タブレットの方が欲しー」
7:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:27:41.49 ID:fILZBOzpo
ねぇ。キミ達の夢って、何かな
8:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:28:18.19 ID:fILZBOzpo
その一言で、俺はほとんど泣き出しそうになった。
――早く大人になりたいな。
9:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:28:57.79 ID:fILZBOzpo
もう一度、子供に戻ってみたい
10:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:30:01.95 ID:fILZBOzpo
そこからは止まらなかった。
涙をぼろぼろと零しながら、ただ四分間のメロディーが終わるまで立ち尽くしていた。
頼りにならない記憶が一言一句、不思議なくらいに歌詞を覚えていた。
11:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:31:19.75 ID:fILZBOzpo
「……樹里」
「なに、パパ?」
12:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:34:52.09 ID:fILZBOzpo
樹里は、すっかり拗ねたように部屋へ逃げてしまった。
散らかした箱を納戸の中にしまい戻し、埃を集めてゴミ箱に入れた。
手を払っていると、ポケットが小さく揺れる。
13:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:36:15.06 ID:fILZBOzpo
「あなたー? ちょっとー」
「おー。いま行くー」
14:名無しNIPPER[saga]
2016/07/22(金) 22:37:16.58 ID:fILZBOzpo
ポケットに、テクノロジーとノスタルジーとファンタジーを詰め込んで。
15:名無しNIPPER[nagasaki]
2016/07/22(金) 22:37:54.96 ID:fILZBOzpo
おしまい。
16:名無しNIPPER[sage]
2016/07/22(金) 22:40:11.99 ID:W19bJciCO
夏の夜とか切なくなる時になんてものを…
乙
17:名無しNIPPER[sage]
2016/07/22(金) 22:50:51.72 ID:4VIXBMIG0
>>1乙
死にたくなった(褒めことば)
18:名無しNIPPER[sage]
2016/07/23(土) 02:39:52.77 ID:FZscGl0go
駄目だ、論者しか出てこない
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