107: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/17(水) 10:34:02.21 ID:90KdAnqB0
言葉を選んでいると、一ノ瀬さんはうーん、と唸った。
「アタシはキミの言いたいことわかるよ。感情とは切り離された問題なんだよね」
「まあね。でも行き詰まってるのも事実なんだよ」
「だったらアプローチを変えてみるしかないかな。拘りは捨てて、新しい視点を取り入れていかないと。科学と一緒だよねー」
アプローチと拘り。自分のスタイルに固執しているつもりはなかったけれど、保守的にはなっていたのか。
「シューコちゃん的には、奏ちゃんの気持ちに共感しちゃうかなー。やっぱり、意識して距離を置かれるのはちょっと微妙かも」
「や、距離を置いてるわけじゃないけど」
「でも、奏ちゃんがそう思ってたら一緒だよね。嫌な想像が過って調子悪くなったりしたら、それこそ元も子もなくない?」
「あー……たしかにそうかも。うん、必要なことなのかもしれないね」
「まあ、無理にとは言わないけどさ。できる範囲で適当にやればいいと思うよー」
塩見さんはアンニュイな調子で言った。鋭い指摘に俺は納得させられる。
「たぶん、カナデちゃんはしょんぼりしててもにっこりすると思うんだー。だからよく見ててあげて欲しいな」
「うん、気をつけるよ」
「お節介だったかな。ごめんねー」
宮本さんはちょっとだけ申し訳なさそうに笑う。
「ごめん助かったよ。ありがとう」
彼女たちの不器用な優しさは俺を決心させる。ここまで気を遣わせてしまって、申し訳なく思う。
ただ、不思議と心のつっかえはなくなっていた。
◇
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