28: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/07/30(土) 03:54:08.39 ID:9se+2GXe0
「と、言うわけでやってきましたテレビ局」
数日経ったある日、俺は速水さんを引き連れて城ヶ崎美嘉の収録を観覧しに来ていた。
アイドルの知り合いは沢山いても、アイドルとしての一面は見る機会がなかった。表裏があるとは言わないけれど、誰だって公私で違う顔を使い分けているはずだ。
だから、アイドルたちの仕事を見て、なにか得るものがあればと考えた。プロデューサーとしての初仕事である。
「そろそろ理由を教えてくれない? いきなり連れて来られて困惑してるんだけど」
口を尖らせる速水さん。なにかを得ようと躍起になりそうだったので、彼女にはなにも説明していない。
べつに得られなければそれはそれでいいのだ。軽い気持ちで眺めるぐらいがちょうどいい。
「自分探しの旅、的な? まあ息抜きもあるのかな」
「どうして疑問系なのよ……」
「まあまあ細かいことは気にしたら負けだぜ」
速水さんはむっと顔を強張らせた。負けず嫌いなようだ。
関係者出入り口前には約束通り、恰幅のいい男が立っていた。彼は入社直後から親交のあるプロデューサーである。
彼に向けて、俺は軽く手を挙げて挨拶する。彼は気づくと破顔した。
「悪いな無理言って」
「気にすんな。使える伝手はどんどん使ったほうがいい」
「ありがとう。今日は世話になるよ」
「ああ、好きなだけ見ていけ。きみもね」
彼は俺と速水さんの顔を交互に見てがははと景気良く笑った。その笑いかたはこちらの気持ちまで明るくしてくれる。
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