過去ログ - 【モバマス】私「クラスメイト、一ノ瀬志希の話」
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17: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:00:18.37 ID:mFvc4esTo

 保険の先生に見せたら、貧血だろうということだった。
 ベッドに横にすると、志希が申し訳なさそうにこちらを見ていた。

「ごめんね」
以下略



18: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:00:57.29 ID:mFvc4esTo

 予備校で過ごす夏休みが終わり、受験の足音が大きくなってきた頃だ。

「ねえねえ、望ちゃんって夜更かしする方?」

以下略



19: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:01:24.26 ID:mFvc4esTo

 その日の受験勉強はいつもより調子がよかった。いつもは躓くような問題もすらすらと答えが出てくる。ちゃんと覚えられるのかな、と心配になるくらいだった。月に一度くらい、こうして調子のいい日がくる。私は時間じゃなく量を決めて勉強する方だけど、そういう日は早く終わった分追加してしまう。
 今日は使わない世界史の参考書を取り出したところで、志希のことを思い出した。時計を見ると、まだ番組の始まる時間ではなかったので、冷蔵庫からアイスを持ってきた。もう日付は変わってしまっているので、家族を起こさないように忍び足だ。
 部屋に戻り、テレビをつける。音量を小さくして、チャンネルを合わせた。
 画面には前番組のお笑い番組が映されていた。司会の人以外はゴールデンタイムではあまり見ない若手ばかりだ。そのせいかあまり面白くはなかった。ゲストできていたアイドルがくだらないギャグに笑い転げていた姿の方が笑いを誘っていた。


20: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:02:00.94 ID:mFvc4esTo

 CMを挟んで例の歌番組が始まる。
 司会はなぜだか知らないけどお笑い芸人だった。コンビでデビューしたけど、いまは一人での活動の方が多い。その流れで真面目な番組にも出たりする人だ。
 何組かが歌い、CMが挟まれる。志希は何を見せたかったんだろう。私が好きなグループが出ていたので、明日はその話をしようかな、なんて考えてながらアイスを食べているとCMがあけた。
 司会の人が次の曲の説明をする。アイドルのデビュー曲ということだった。それどころか、今日がテレビに初登場らしい。
以下略



21: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:02:37.79 ID:mFvc4esTo

 司会者に促され、そのアイドルがステージに姿を見せる。

『はーい、一ノ瀬志希ちゃんでーす』

以下略



22: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:03:04.80 ID:mFvc4esTo

 その瞬間、画面が暗転した。
 そういう演出だと思ったが、一向に音楽が流れない。ざわざわした声をマイクが拾っている。司会が慣れた口調で機材トラブルだと説明する。チャンネルを変えないで、とおどけた様子で冗談を言ったので、スタッフから笑い声が上がった。
 一方で私は笑えなかった。むしろ、何を笑っているのだと怒りすら覚えていた。
 だって、志希はただでさえ緊張するステージで、こんなトラブルの後に歌わなければいけないのだ。
以下略



23: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:03:40.11 ID:mFvc4esTo

 祈るように画面を見つめていると、その中心に光が灯った。
 小さな光が流れるような軌跡を描いていく。
 浮かび上がったのは、志希、というサインだった。その光のサインの向こうには暗闇の中でうっすらと志希の顔が映っていた。不敵に笑う彼女は紛うことなきアイドルだった。

以下略



24: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:04:10.72 ID:mFvc4esTo

 昨日は興奮して眠れなかったが、朝になると思ったよりすっきりしていた。あの興奮も冷めて、学校に行く頃には夢でも見ていたんじゃないか、と現実感を失っていた。
 その日は私よりも先に志希が学校にきていた。夏休み明けにした席替えで、志希は再び私の後ろの席になっていた。

「おはよう」
以下略



25: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:04:36.89 ID:mFvc4esTo

 私が志希のCDを発売当日に買う頃には、志希はたまに学校を休むようになった。アイドルの仕事があるらしい。学校には説明してあるらしいけど、クラスには内緒だった。たぶん、彼女のことだから、誰かに聞かれれば正直に答えるのだろうけど。
 その代わり、体育は見学しないようになっていた。普通に準備運動もランニングもこなせるようになっていた。踊りながら歌を歌えるのだから、体育の授業くらいは楽勝だろう。
 夏の暑さが陰りを見せてくると、球技大会が行われた。クラスごとに男女別に何チームか出してトーナメントをするというものだ。一年生のときはフットサル、去年はバレーボール、今年はバスケットボールだった。
 私は志希と同じチームになった。ふわふわの髪を一つに束ね、体育着の上にゼッケンを重ねると意外とさまになっている。見慣れた体育着とゼッケンなのに、彼女が着るとドラマの衣装のようだった。私のそんな感想もつゆ知らず、志希はくんくん、とゼッケンの匂いを嗅いで身体を震わせていた。
以下略



26: ◆TZIp3n.8lc[saga]
2016/08/08(月) 21:05:07.60 ID:mFvc4esTo
 二週間ほど前から体育の授業ではバスケをやっていたが、志希はちょうど忙しくなったみたいで一度も体育に出ていなかった。
 運動の苦手な志希らしく、シュートやドリブルどころか、ろくにパスも出せない。聞いてみるとバスケは一度もやったことがないらしい。そのため、私はバスケのルールを説明してやる必要があった。

「頑張ろうねー」

以下略



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