111:名無しNIPPER
2016/08/20(土) 21:16:57.56 ID:D33bbYIF0
振り返ると、大きな水色のキャリーバッグに、小学生くらいの女の子。
少し大きすぎる、麦わら帽子を被っていた。
「……え?」
「ですから、一番近いところにある高校を教えてくださりませんか?」
慣れていないような敬語だった。
白いタンクトップに、短パン(ジーパンのやけに丈の短いやつ。なんていうんだろう)。
どこか見覚えのあるような顔をしていた。
「えっと……よかったら、送っていこうか?」
こんな時間から、キャリーバッグを引きずって道を尋ねる……恐らく、旅行というよりは、家出だろう。
「いえ、道を教えていただけるだけでいいです。もう六年生なので」
知らない人に簡単に歳を教えちゃダメだぞ。
が、ここで何か余計なことを言って、胸元の防犯ブザーを鳴らされると非常に困るので、大人しく簡単な道のりを教えた。
警察に届けようかとも考えたが、もし仮に家出だとしても、これだけの荷物を持って、防犯ブザーも用意してるくらいだし、少々心配はいらないだろう。
教えた道は、これから通学や通勤で人通りが増える道路だ。
「……覚えられる?」
「覚えられる……です」
それはよかった。
覚えられるというのなら、それを信じよう。別に、俺に止める義務なんてない。
いつか、誰かが言っていた気がするーー小学生でも、物事を本人なりに考えた上で行動してるんです。
女の子は、ありがとうございます、と小さな頭をさげると、体に似つかわしくない大きなキャリーバッグを転がして、曲がり角の奥へ消えていった。
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