290:名無しNIPPER[saga]
2016/08/28(日) 23:25:47.60 ID:ilA7zgD60
「あんたさ」
ねえちゃんが歩調を緩める。
「なんかあったでしょ」
心臓が跳ねる。
思わず歩みを止める。立ち止まってしまう。
「……わかる?」
「当たり前でしょ」
ねえちゃんはジトッとした目線を俺に向けた。
しばらくそのままの姿勢で目が合ってて、それからまた前を向く。
「それと、関係あるかわかんないけど、好きな人もいるでしょ」
「……そこまでわかる?」
「私を誰だと思ってるの」
「ねえちゃん」
「正解」
侮ってはいけなかった。
……ある意味、母より鋭い。
頭上をくるくると飛び回る鳶が、よく響く、細い鳴き声を、辺りに響かせていた。
まぁ、どうしようとあんたの勝手だけどね、と、ねえちゃんは少し先を歩く。
俺の勝手、か。
ねえちゃんの少し後ろを歩きながら、その言葉を頭の中で反芻した。
頼りない夕陽は、いつの間にか山の向こうに沈みかけていて、川面はだんだんと黒く染まりつつあった。
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