過去ログ - 男「ここにいたんだ」
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82:名無しNIPPER
2016/08/19(金) 20:16:01.48 ID:F+nlZ94w0
「……することないな」

「うん」

 でも、集まったところですることも、話すことも、なかった。

「……帰るか」

「帰るか」

「帰ろっか」

「……誰がポテト代払う?」

 今日、俺たちが二時間弱粘ったのに対し、注文したのはコーラ三杯とポテト二皿だけだった。
 これならファーストフード店に行けばいいのでは、と思われそうだが、俺たちはあの雰囲気が苦手だった。

 だからそういう意味では、ここはちょうどよかった。

「前回はユウキが払ったな」

「学校帰りの時か」

 というか、休みの日に集まったのは初めてだ。
 いつもここに来るときは、学校が早く終わる日の、放課後なのがほとんどだった。というかこの喫茶店に来たのがまだ二、三回目。

「二人が払ったのか」

「まだ払ってないのお前?」

「俺だわ」

 俺だった。

「じゃあ会計してるから先行ってていいよ」

 ごちでーす、と椅子から立ち上がり、風鈴を鳴らして二人は出て行った。

 俺たちに気を遣ってくれたのか、マスター(俺たちはそう呼んでる、かっこいいから)はカウンターの奥の部屋に引っ込んでしまっていた。
 あの奥がどうなっているかは、見たことがない。見る機会もないと思うけど。

 すみませーん、と声をあげた後、手元にベルがあったことに気付き、念のため鳴らしておく。

 はーい、すぐいきまーす、と聞こえてきた声は、男性のものではなかった。女の子の声。

 少し驚いて、え、本当にユウキの言う通り……と思いかけたところで、その声が、どこかで聞いたことあるモノだと気付いた。

「すみません、お待た……」

 申し訳なさそうな、でも気さくな笑顔には、見覚えがあった。

 向こうも、ハッと固まっている。

「……先輩?」

「……コヨミちゃん?」


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