9:名無しNIPPER[saga]
2016/08/17(水) 20:35:39.78 ID:cSUEPfQ20
「そうですか」
少しつまらなさそうにカバンから水筒を取り出すと、ナナコは湯気が立つお茶を一口飲んだ。
「こんな季節に、熱いお茶?」
イチが、椅子の上で足をプラプラと揺らしながら聞く。
「暑い時にこそ暑いお茶なんです」
ナナコは時々年寄りみたいなことを言う。
魔法瓶のフタがキュッ、と音を鳴らして締まる(魔法瓶って字面が面白い気がする)。
「でも、ナナコは寒い時も熱いお茶だよな」
要は、お茶は熱い方が美味しいんです、とナナコは水筒をカバンにしまった。トテトテとこちらに歩いてきて、跳ねるようにしてイチの隣に座る。
「ひまですね」
「ひまだね」
女子二人が口を揃えてそう言う。結局人が増えたところで、することが無いのに変わりは無いのだ。
だが、女子二人と狭い部屋。贅沢は言ってられない。
「何か面白いこと言ってくださいよ」
ナナコが無茶なことを言い出した。
こちらを見上げるその目には、別に期待なんかこもっちゃいない。多分、本当に適当に言っただけだろう。
「そのフリって、もう『お前面白いこと言えねぇだろ』と同じ意味を持ってると思う」
「随分ひねくれてるね」
「何しろ俺はこのフリをされて面白いことを言えた人を見たことがない」
「私はありますよ」
「まじで?」
「いついつ?」
「あれは5年前の夏……」
「ごめんやっぱいいわ」
「なんなんですか!」
一通り話した後、結局何も話すことがなくなって三人とも黙る。
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