94:名無しNIPPER
2016/08/20(土) 09:04:23.81 ID:D33bbYIF0
「ところで、二人はなんかしてたの?」
あまり見る組み合わせではなかったので(というか初めて見る組み合わせだ)、少し気になって、尋ねてみる。
イチは手ぶらに見えた。
「ねえちゃんに、宿題手伝ってもらってた」
「……悪い人がいる」
「そういう意味じゃなくて、わからないところを教えてたの」
ねえちゃんはため息をつきながら、俺の方を見てそう言った。
イチがからからと笑う。
それからは、くだらない会話をしながら、三人で家路を歩いた。
雨が降っていたので、行きよりも靴は濡れていたけど、足取りはずっと軽かった。
会話が途切れて、雨の音が響く。セミの鳴き声は、今日は休みのようだった。
「そろそろ部屋片付けた方が良くない?」
ふと思い出して、ねえちゃんに尋ねる。
「あー、お願いしようかな」
「え?」
イチが少し前に出て、ねえちゃんと俺を交互に見た。
「部屋片付けるって、誰の?」
「私の」
「ねえちゃんの家の」
ねえちゃんと乙坂父は、放っておくとすぐ部屋を散らかす。
本人たちは「散らかしてるんじゃなくて、使うから置いてるの」と言ってはいるが、明らかに使わないようなものも、リビングに置いてあったりする。
「……なぜ?」
イチは眉の端を下げて、訝しげに尋ねてきた。
「習慣と言うか、そんな感じ」
持ちつ持たれつ、だ。
俺は掃除が嫌いではないし、乙坂家は掃除が苦手だ。そして、ねえちゃんは見られて嫌なものがあるようなタイプでもない。
「だから掃除してるの」
「ふーん」
イチはちょっと不思議そうな顔をした。
思えば、昔ユウキに話した時もそんな顔をされた気がする。
いや、ユウキの時は「掃除はしないけど変わってくれ」と言われたんだったか。流石に目的が目的だったので、普通に断っておいた。たぶん冗談だろうし。
「なら私も手伝うー」
「いいの?」
「課題、かなり進んだしね」
夏休みが始まる前から進めるとは感心だ。俺も急がねば。
「じゃ、ねえちゃんち帰ったらご飯食べて掃除」
「うん」
「助かる」
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