9:名無しNIPPER[saga]
2016/08/24(水) 22:56:53.28 ID:KLEjUIgh0
あんな夢を見たせいで寝覚めは最悪だった。
坂ばかりのこの町は、よせばいいのに学校までもが山の上にある。
運転手の愛想は最悪だが冷房だけはしっかり効いたバスを降りた瞬間、立ち上る熱気が塊となって顔面にぶち当たった。
気の抜けていた俺は一瞬で現実に引き戻され、停留所から登る坂の上の、青すぎる空と入道雲をバックにした校舎を仰ぐ。
他の部の連中もぞろぞろとバスから降り、正門までの坂道に足を踏み出しちゃいるが、誰も彼もまだ始まってもいない部活に思いを馳せ、一様に憂鬱な顔をしていた。
坂を登るごとに汗が額から噴出し、セミの声がのしかかってきて、その重さでうなだれていた姿勢を、もういちど引き上げる。
いつまでも続く8月の空。恐いくらいの入道雲。難攻不落の三階建て校舎、
正門の前の制服姿。
蜃気楼かと思う。見慣れた校舎から出てきた、見慣れない装い。
練習試合に来た他所の生徒かと思い、噴出す汗を念のため拭って凝視し――今度こそ幻覚を疑う。
あるいは、夢の続きか。
転校したはずの人間が校舎から出てくるなんて、死んだ人間が生き返るくらい信じられなかった。
それも、まさか、よりにもよって、
「お、岡崎……?」
立ち尽くす俺に、そいつが気がついた。そこまでも夢と同じだった。
逃げも隠れも出来なかった。
「お久しぶり。部活?」
しずしずと坂を下り、俺の前で目の前で微笑んでいたのは、間違いなくあの岡崎だった。
この瞬間、俺は気付いていたんだと思う。
でも、ここらでは見ない垢抜けた制服が、いつからかの眼鏡が、似合いの標準語が――『夢にまで見た』彼女の実在が、
違和感を、些細なことだと切り捨てていた。
21Res/29.81 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。