12: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:27:16.37 ID:Bte9AddR0
沈黙は心地良かったが、気がかりだったことを思い出した。
「今日のお仕事は、もういいんですか?」
「ええ、まあ。ちひろさんは?」
13: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:29:13.62 ID:Bte9AddR0
それを聞いてわたしの脳裏に、ひとりの少女が浮かぶ。
一ノ瀬志希。
才能という天からの贈り物を羽織る、ギフテッドと呼ばれる存在。
14: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:31:30.69 ID:Bte9AddR0
アンビエントミュージックは粛々と流れ続ける。
徐に彼が二本目の煙草に火を点ける。
それを切っ掛けに、漸く話を切り出すことができた。
15: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:33:05.45 ID:Bte9AddR0
「志希ちゃんに限ってそんなこと、あるんですか」
虚を突かれたあまり、言い方がストレートになってしまった。
プロデューサーもわたしの驚きぶりを見て、無理もないと言わんばかりに肩をすくめてみせる。
16: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:36:29.58 ID:Bte9AddR0
「他の人は勿論、志希本人にも言わないでくださいね?」
そう言って彼は煙草の煙に乗せるようにして、話し始める。
「志希自身、誰にも見せないところで精神的に塞ぎこむ部分があったみたいで、それが仕事に影響したのかもしれないんです」
17: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:39:09.57 ID:Bte9AddR0
「……そうですね、ここはプロデューサーさんがしっかりサポートしてあげるところだと思います。ですけど」
「ですけど?」
「志希ちゃんの話を聞くだけじゃだめですよ? きちんとプロデューサーさんからも歩み寄らないと、です」
18: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:41:04.91 ID:Bte9AddR0
「俺はあいつのプロデューサーですし、責任があります」
「それに、どうせならもっといい景色を見せてやりたいんです。トップアイドルという高みから」
「……その為には、あいつと対等に向き合わないといけないってことですね」
19: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:42:47.16 ID:Bte9AddR0
「……それにしてもここ、なんなんでしょうね」
気恥ずかしくなったのか、彼が無理に話題を変えてきた。
「喫煙室なら談話室の横にもあるのに」
20: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:45:35.34 ID:Bte9AddR0
その後も気の抜けたボールのように弾まない会話を幾つか交わして、お開きになった。
わたしもプロデューサーも、明日の朝には仕事が待っているのだ。
21: ◆K5gei8GTyk[sage saga]
2016/08/22(月) 21:48:58.62 ID:Bte9AddR0
「やっぱり、煙草は控えた方がいいんでしょうか」
わたしがそう尋ねると、彼は首を横に振った。
「別に構わないと思いますよ。ちひろさんは大人の方ですし」
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