過去ログ - 鷺沢文香「読み終えたら、またここに来てください」
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12: ◆.qG5SOGbi.
2016/08/28(日) 22:10:26.63 ID:3ZgXLCZE0


「ごめん、今日は用事あるから」

放課後のゲームの誘いに断りを入れて、家へと向かう。
玄関を開けてランドセルを投げ捨てると、傍らにおいてある財布を開け、中身をもう一度確認する。
500円玉はしっかりと入っている。よし。
無造作にポケットに突っ込み、外に出てさっさと自転車にまたがると、力の限り足を踏み出す。
後ろから聞こえる母さんの声がどんどん遠ざかっていった。

あの出来事の後、僕はすっかり本の虜になっていた。
彼女―後から知ったが、鷺沢さんと言うらしい―に本の代金を返しに行った際に、
興奮冷めぬまま感想をべらべらと喋ってしまったくらいである。
彼女も、本を好きな人が増えたことを素直に喜んでいたようで、また僕におすすめの本を教えてくれた。
いつの間にか、鷺沢さんが勧めた本を買って、その感想を500円玉とともに伝えに行くのが僕の習慣になっていた。

この前の本は面白かった。
推理小説を勧められたときは正直絶対についていけないと思ったのだが、
気が付けば最終ページを前もって見ることもなく、その事件の一部始終に囚われてしまっていた。
鷺沢さんの教えてくれるものに外れはないのだ。次は、どんな本を教えてくれるのだろう。

そんなことを考えていると、あっという間に古書堂が目の前だ。
自転車を日陰に止めると、いつものように扉を開けた。


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