過去ログ - 鷺沢文香「読み終えたら、またここに来てください」
1- 20
41: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/18(日) 16:29:54.35 ID:aNVVLWUx0
「…あの日の夜、僕に相談してきたんだ。『どうしたら良いのか迷っている』って…
実はその時、正直とても驚いた…すぐに断ると思っていたから。
あの子は、大人しくて、物静かで、すごく引っ込み思案な子だったからね…自分から人前に立とうとするなんて、思えなかったんだよ。
だから『どうして、迷ってるんだ?』って聞かずにはいられなかった。もしその理由や覚悟が中途半端だったなら、
何としても止めるつもりだった。こっちは到底無理だとしか思ってなかったからね…そしたら、あの子がこう言ったんだ。
以下略



42: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/18(日) 16:33:42.02 ID:aNVVLWUx0
店長さんが、こちらをちらりと見ると話をいったん止めた。

「あぁ、ごめん。流石に無神経だったかな」

「……何がですか」
以下略



43: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/18(日) 16:34:26.38 ID:aNVVLWUx0
「だって、君、文香ちゃんのこと好きだったろ?」


44: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/18(日) 16:36:47.69 ID:aNVVLWUx0
頭が真っ白になった。

「は」

「え」
以下略



45: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/20(火) 01:17:30.12 ID:v95LF+Hh0
「……あー…その、すまなかった」

「……いえ、大丈夫です……」

さっきまでの時間が嘘だったかのように、どちらも口を開かなかった。
以下略



46: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/20(火) 01:18:35.36 ID:v95LF+Hh0
「君が、彼女と出逢って、彼女と本をどちらも好きになったのを、僕は見ていたから」

予想は、外れなかった。


47: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/20(火) 01:25:53.08 ID:v95LF+Hh0
また、時間が静かに流れていった。
やがて、店長さんが、ふぅ、と余った息を吐きだした。

「……悪かったね、こんな話をして」

以下略



48: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/20(火) 01:36:24.52 ID:v95LF+Hh0
気づけば、学校はすでにHRを終えていた。
帰るには早すぎた自宅に、もうそろそろ向かっていないと怪しまれる頃だ。
扉の前で店長さんに礼を言うと、彼は少し寂しそうにしていた。

「また、来ます」
以下略



49: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/20(火) 01:58:15.01 ID:v95LF+Hh0
「…そういうことですか」

「そういうことだよ」

「……じゃあ、少し時間がかかるかもしれないです」
以下略



50: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/20(火) 02:01:27.69 ID:v95LF+Hh0
外に出ると、すっかり日は落ち、深い藍色に星々が輝いていた。
おそらく、この場所に来なかったらこれでさえ憂鬱だっただろうと思いながら、イヤホンを耳に挿し音楽を探す。

何もかもが腑に落ちていた。
あの頃の僕が、どうして鷺沢さんと無理やりでも話したがったのか。
以下略



51: ◆.qG5SOGbi.
2016/09/20(火) 02:48:19.50 ID:v95LF+Hh0


「遅くならないうちに帰ってきてよ。あなたいないとお義母さん寂しがるから」

「分かってるよ。すぐに帰ってくるから」
以下略



59Res/32.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice