過去ログ - 澪「シンクロナイズドドリーミング」
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30:名無しNIPPER[sage saga]
2016/09/09(金) 16:35:18.84 ID:ROM1DOs8o

黒唯「私にとってはね、つまずいた時のことを持ち出されるのは大きかったんだよ。あの時、私は澪ちゃんに見惚れてたんだから。言ったよね、澪ちゃんのほう見てた、って」

澪「あ、あれはそういう意味だったのか。唯もつまずいたって言ってたし、てっきり私がつまずくことを予測していたのかとばかり」

黒唯「予測してたならもっと先に言うよ。私もつまずいたから澪ちゃんがつまずいた時に反応できたっていうのはあるかもしれないけど」

澪「どっちにしろ私のほうを見てなければ無理だった、ってことか」

黒唯「そゆこと。澪ちゃんに目を奪われてなければ、ね」

澪「て、照れるな・・・全然気付かなかったよ」

黒唯「それは私もだよ。この世界で会うまで、澪ちゃんに好かれてるなんて思いもしなかった」

澪「お互い様、ってことか」

黒唯「うん、お互い様。私の視線に気付かなかった澪ちゃんもだけど、私自身も案外にぶちんなんだよね」

澪「うーん、唯は鈍いというより、ライクとラブの違いもわかってなさそうだなって思ってた」

黒唯「失礼だなぁ、それくらいはわかってるよぉ」

澪「確かに、この世界に来てるってことは、そういうことなんだよな」


私の中の唯の像が反映されているだけならば、こんな事は起こり得ない。私の知らない唯の姿を黒唯が見せてくれるなんて事は。
目の前の唯がちゃんと本物の唯の思考と繋がっているんだという事を実感する。

・・・そして同時に、これが練習に過ぎないんだという事実が頭の中に蘇る。
さっき覚悟を決めて、必死になった瞬間に頭の中から抜け落ちた事実が。本物の唯に接するように本気で練習を頑張ったせいで抜け落ちた事実が蘇ってくる。
本気で練習をしていたせいで練習である事を忘れるなんてなかなか皮肉が効いていると思う。

つい一瞬前まで照れて赤くなっていたであろう顔が、冷えていくのを感じる。
そうだ、目の前にいるのは本物の唯じゃない。赤くなってどうするんだ。確かに本物の唯のようにストレートな言葉をぶつけてくるけど・・・
いや、違う。本物の唯と何ら変わらない存在なんだと言っていた。シンクロしている存在なんだと。ならばそれは唯の言葉と同じ。

そう結論を出した瞬間、また一つの疑問が浮かぶ。

唯のような子は、言葉に感情を乗せる。心や魂を乗せてくる。私に感情的な反応をさせるくらいに、だ。
そんな重みのある言葉を、私はここで、夢の中で聞いてしまっていいのだろうか? 現実より先に、フライングして聞いてしまっていいのだろうか?
現実の唯が言葉として発する前に私が知ってしまうという事は、すなわち唯の心の中を覗いてしまっているのと同じではないのだろうか。
相手があの唯だからこそ。言葉に感情を乗せる唯だからこそ、だ。


黒唯「・・・なるほど、そういう考え方もあるのか」


私の考えを読んで言葉を発した彼女は、丸くかわいいいつもの唯の目ではなく、若干座ったような目つきをした『黒唯』だった。
黒唯は少し思案した後、私に確認を取るように尋ねる。


黒唯「ここでの唯の言葉は、限りなく似せてあるけど所詮は私という偽者の言葉だよ。私はそう認識してる。けど澪ちゃんにはそういう考え方が出来ない、ってことだね?」

澪「唯という人間自体は底が知れないけど、言葉はほとんどそのまま受け取っていいタイプだから」


唯とて、絶対に嘘を吐かない人間というわけではない。見栄くらいは張る。だから「ほとんど」ではある。
けれど、底の知れない人間性に反して嘘や見栄は目に見えて薄っぺらい。例外としてもほとんど考慮しなくていいくらいに。


澪「だからその底が知れない部分をシンクロしたあなたが再現してしまったなら、それはもう唯だ」

黒唯「うーん・・・確かに、ここまで裏表のない子は初めてなんだよねぇ、私も」


黒唯も・・・いや、正確に言うなら中の『彼女』も困惑しているようだ。
しまったな、彼女を追い詰めるつもりで言ったわけではないのに。私に親身になって協力してくれている彼女を。


澪「あ、いや、あの、助けてもらってる側だからあまり偉そうなことは言えないんだけど・・・」

黒唯「気を遣わなくていいよ、澪ちゃん。唯のことも澪ちゃんのことも理解して二人をくっつける、それが私の仕事なんだから」

澪「・・・ご、ごめん」

黒唯「謝らないでよ。私だって誇りを持ってこの仕事をやってるんだから。恋愛成就に導く集合意識として、システムとして、そして元人間としての誇りを」

澪「えっ・・・元人間?」


若干怒ったような物言いの中の聞き過ごせない言葉をオウム返しに問い返すと、いかにも「失敗した」といった感じの顔をされた。
これは黒唯の、彼女の素の失言ということか。まるで私がわざと怒らせて失言を引き出したみたいな形になってしまったけど。



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