過去ログ - 星輝子「第3.5回 フレ志希のケミカルカオスキュートラジオ(仮)」
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8: ◆mBiXSAH/fw[sage saga]
2016/09/13(火) 23:58:38.63 ID:/wRsch+H0

戦いは苛烈の一途を辿っていった。
シメジ平原攻防戦、ツキヨダケ山攻略戦、ベニテングダケ山防衛戦、マイタケ砂漠侵攻戦……
数多の戦場を俺は男と潜り抜けてきた。
俺の所属する特選部隊はキノコの地名が付いた場所では圧倒的戦果を挙げることから、
特選キノコと呼ばれてタケノコ帝国兵士に恐れられるまでになった。

男の戦闘スキルは部隊教導としても機能するようだ。
こんな一幕があった。

「おい、剣を血まみれのまま放置するな。錆びるじゃろう」

「水かければいいだろう」

「たわけ! 道具を粗末にすると命を落とすぞ!」

「た……たわ?」

「すまん、方言じゃ。『ばかもの』ということじゃな。刃はしっかり磨いて鏡面仕上げしておくのじゃ」

「鏡面仕上げ……、目くらまし用か?」

「半分当たりじゃな。刃の向きによって後方確認もできよう」

「そういう使い方をしてたのか」

「手札が一枚増えるだけでも、一人での戦術の幅が大きく変わるのじゃ。特に乱戦や決闘ではな」

「何か俺も考えてみるか……そうだ、刃を徹底的に磨けば包丁みたいに鋭くなって、
皮の鎧も切り裂けるんじゃないか?」

男は一瞬ぽかんとしたが、すぐに大笑いした。

「剣は叩いて潰し切るものじゃ。お主の大好きな茸を調理するように切り裂くことなんかできんよ。
遠い国では切れ味の鋭いカタナという武器あるそうじゃがのう」

「……そうか。だが忠告は聞こう。しっかり手入れしておく」

「うむ。それが良かろう」

満足そうに男は頷いた。
こうした男の戦闘経験による工夫から部隊損耗率は大きく減少し、結果特選部隊の練度は向上していった。

しかし、終わり無き争いは皆の心を磨耗していく。
誰かが荒立ったときは卓を囲み、酒を飲みながら話して互いの悩みを打ち明けあった。

故郷に残した家族のこと、近々発令される作戦のこと、先日亡くなった仲間のこと、この戦争の行く末について。
話し合いの中で、男は常に話の中心に居た。
俺たちは部隊の絆を超えて家族だった。誰かが裏切るなんて考えもしなかった。

――カチッ。

脳裏にまたあの音が響く。
キノコ王国の城下町に行ったとき気付いたが、どうやら時計というものの針が進む音らしい。
この音は何だろうか。この音の意味がわかる日が来るのだろうか。



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