1:名無しNIPPER
2016/09/17(土) 18:20:03.97 ID:RBrPvO4M0
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私は猫である。名前は「ミケちゃんやろ?」……ミケである。三毛猫だからミケ。安直な名前だ。
「……あんちょく?」
私の顔を覗き込むようにしてしゃがむ少女が首を傾げる。どう説明すればわかるだろうか。そう考えてから、私は「にゃあ」と声を出す。いい加減な名前だ、という意味だ。
「いいかげん……つまり、悪口ってこと?」
悪口と言うよりは皮肉だが……まあ、そんな風なものだな。
「……おばちゃんに言ってもいい?」
それはやめてくれ。
「えー……どうしよっかなー」
少女はいたずらっ子めいた笑みを浮かべて私を見る。この少女は私の飼い主の姪であり、家が近いこともあって、しばしばここに通っているのである。
「お、みくちゃん。今日もミケとお話か?」
少し離れたテーブル席で食事している一人の常連客が言う。
「うん。ナイショの話やから、おっちゃんにはひみつー」
にひひとはにかむ彼女に常連客は「そんなん言われたら気になるわー」なんてことを言って、パクリとお好み焼きを口に入れる。「んー……やっぱりここのお好み焼きはうまいわ」
「せやろー? ここのお好み焼きはみくのお墨付きやからな」
ふんす、と胸を張ってみくが言う。……どうして君が偉そうにしているんだ。
「なんでみくちゃんが偉そうにしてるねん」
私が思ったことと同じ言葉を言ったのはこの店の主人にして私の主人である。ペットは飼い主に似ると言うが、そういうことなのだろうか。
「ほら、みくちゃん。舞ちゃんのビデオ持ってきたから、それ見とき」
「舞ちゃん!?」
みくは跳び上がってテレビの方に走っていく。やれやれ、ようやく落ち着ける……そう思ったのも束の間、「ミケちゃん! ほら、舞ちゃんやで!」Uターンして戻ってきたみくに抱きかかえられて、テレビの前で抱っこされる。……逃げられない。
「……みくちゃん、ほんまに舞ちゃん好きやなぁ」
ご主人がビデオをセットしながら苦笑する。「うん!」みくは笑顔でうなずく。「舞ちゃんは、みくの大好きなアイドルやもん!」
そうしている内に準備が終わり、ビデオが再生。ライブ会場が映される。
「わあ……!」
みくは目をきらきらとさせてテレビを見る。そんな彼女を、私は見る。
今テレビに映っているのは伝説のアイドルだ。だが、今は既にアイドルを辞めている。
そんなものを見るよりは、私は、この少女を見ていたい。
――十年後、『アイドル』になる彼女のことを。
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2:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 18:21:24.22 ID:RBrPvO4M0
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私が生まれた頃、既にみくはしばしばこの店に遊びに来ていた。
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