14:名無しNIPPER[saga]
2016/09/17(土) 18:30:29.33 ID:RBrPvO4M0
7
十年後。
「みくちゃーん! そろそろ出発せんと間に合わへんでー!」
店の入り口の方から、そんな声が聞こえた。
「はーい!」
高校生くらいの少女が言って、目の前でくつろぐ猫に顔を向ける。
「それじゃあね、ミケチャン。みく、アイドルになってくるにゃ」
猫のことを愛しそうに撫でながら、少女は言う。
「あ、この語尾は何かって? ふっふっふ……よく聞いてくれたにゃ」
そんな少女に猫は「にゃあ」と言う。聞いていない、とでも言うような調子だった。
しかしそんなことは無視して少女は言う。
「みくは猫チャンアイドルになるって決めたにゃ! そして、猫チャンなみくが一番かわいいって、みんなに認めてもらうの!」
少女は高らかに宣言した。猫は呆れた調子で「にゃあ」と言う。
「もしかして呆れてる? でも、みくは本気だからね。それでミケチャンとの約束を果たすの!」
少女の言葉に、猫は「にゃあ」と答えた。
少女には、猫が何を言っているのかわからない。
でも。
「……もちろん、ミケちゃんとの約束のためだけ、じゃないからね。みくがそうしたいから、そうするの!」
少女は言う。
「だって……それがみくの、夢だから!」
その言葉に。
「……にゃあ」
猫は満足そうに言った。そんな猫に、少女は微笑む。
その時。
「みくちゃーん! ほんまに間に合わへんようになるでー!」
入り口からそんな声。少女はまた「はーい!」と応えて、
「それじゃあ、行ってくるね、ミケチャン。すぐテレビに出るようなアイドルになるから、待っててにゃ」
最後にそう言って、少女はその場を離れて行った。
猫は彼女を追いかけることなく、ただ、その場でくつろいでいた。
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