過去ログ - 私の世界を壊すキス
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1: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 19:23:48.06 ID:9IglMqLM0
百合
唐突に終わったらごめん





艶やかな黒。
彼女は綺麗な瞳をしていた。
思わず、人差し指で突刺してしまいそうになるくらい。
実際、このタイミングで突刺しておけば良かったのかもしれない。

「えっ……」

「ごめんなさい」

頭を下げた。
このクラスメイトにそんなことをされる覚えはなかった。
長くふわりとした髪がはらはらと重力に従った。
なんで謝るの?
と理由を尋ねる前に、彼女は私の唇を奪った。
周りにいた同級生が叫んだ。
えー! とか、うそー! とか。
いやいや、それこっちの台詞だから!
教室の後ろで花の水の入れ替えをしていた私は、思わず花瓶を落としてしまったのだった。

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2: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 19:36:49.52 ID:9IglMqLM0
「ねえ、今どんな気持ち?」

お昼休み。
中庭で膝に顔を埋める私に、この騒動の主犯が言った。

以下略



3: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 19:43:21.81 ID:9IglMqLM0
首筋がひやりとしてきて、私は漸く顔を上げた。
周りには誰もいなかった。
立ち上がる。
教室に戻りたくない。
あの転校生が、くそ女の指示に従って仕方なくあんなことをしたのだとしても、
以下略



4: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 19:54:19.32 ID:9IglMqLM0
戻ってきて教室の扉を開くと、やはり数人の女子はこちらをちらちらと盗み見てきた。
その視線を避けるように背中を丸めて、私は席に座った。
転校生――杉原ゆうは自席でうつ伏せになって縮こまっている――と思ったのに、
あろうことかあのくそ女――南合と同じグループでへらへら笑っていた。

以下略



5: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 20:10:31.13 ID:9IglMqLM0
とは言っても、今週はあと数回は覚悟しなくてはいけない。
今月に入ってこのいじめのルールも分かってきていた。
月に何回か、ランダムで対象を選ぶ。そして、南合は自分の思いついた遊びを選出したクラスメイトにさせるのだ。
命令に背いた者は、される側に回る。それが1週間は続く。
今週は先月転校してきた杉原さんと私が選ばれたというわけだ。
以下略



6: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 20:17:56.38 ID:9IglMqLM0
放課後。適当に入ったバスケ部をお腹が痛いのでと断ってズル休みした。
精神的にはけっこうお腹が痛くなってもおかしくないのに。
なぜか健康優良な体が激しく憎い。
私を病院送りにしたい。

以下略



7: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 20:26:12.86 ID:9IglMqLM0
これのコツは、光ったと感じた瞬間にそっちの方向を見ずに直感で手をさっと出すこと。
そう説明した時、友人は理解不能だと表情で語られた。
だからね、こう、さっとね、と繰り返しても友人の結果は80代から変わらなかった。
二人で対戦するモードもある。
それは、けっこう楽しかった。
以下略



8: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 20:31:04.07 ID:9IglMqLM0
振り返った5秒後くらいに、ブザーが空しく鳴った。

「あ」

目の前に杉原さんがいたことより、最高得点を逃したことがショックで、
以下略



9: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 20:36:32.62 ID:9IglMqLM0
「いいよ。それより、何か用?」

「江梨香さんが入って行くの見えたから……それで、つい」

「南合のグループの奴らに見られたらさ、また何かされるよ」
以下略



10: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 20:42:25.86 ID:9IglMqLM0
私が呆気にとられていると、また、ごめんなさいと謝った。

「喜ぶって、キスのこと、言ってる?」

私は自分の言葉を疑わし気に吐いた。
以下略



11: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 20:51:14.91 ID:9IglMqLM0
「地域によって、友だちの作り方違うのかなって……思って」

「あんたは、アマゾンの奥地からの帰国子女なの?」

彼女は素早く首を振った。
以下略



12: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 20:59:42.54 ID:9IglMqLM0
「じゃ」

「江梨香さんっ」

まだ何か言いたそうだった空気を読まずに、私は逃げるようにゲーセンを後にした。
以下略



13: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 21:08:18.03 ID:9IglMqLM0
たぶん『友だち』って言う呼称の別の何かと勘違いしてるんだ。
自分でも何言ってるのか分からないけど。
きっとそう。
あー、明日も憂鬱。
帰りにゲーセン寄ろう。
以下略



14: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 21:17:20.82 ID:9IglMqLM0
翌日。キスはなかった。
代わりに、私の隣の席に杉原さんが座っていた。
そこは南合の席だったはずだけど。
私は数秒程杉原さんの顔を凝視していた。

以下略



15: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 21:29:15.79 ID:9IglMqLM0
授業後に、南合に捕まった。
女子トイレ。
個室に入る前に、捕まった。
トイレに行かせて欲しかった。

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16: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 21:43:06.21 ID:9IglMqLM0
言葉の意味が時間差で理解される。

「やっと顔上げた」

南合の釣り目が視界に入った。
以下略



17: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 21:51:09.30 ID:9IglMqLM0
彼女がいなくなってから、奥の個室で水が流れた。
さっきの会話聞かれただろうか。
まあ、どうでもいい。
私には関係ない。
どうでも――。
以下略



18: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 21:57:33.78 ID:9IglMqLM0
「ごめんなさい」

杉原さんが腰を90度にして謝った。

「え、なんで」
以下略



19: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 22:03:52.24 ID:9IglMqLM0
今日一日、杉原さんはずっと私の隣にいた。
南合の目のない所で、私はこっそりと尋ねた。

「あのさ、今日もしかして一日中隣にいろって言われてるの?」

以下略



20: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 22:13:10.77 ID:9IglMqLM0
仲良くなりたいわけじゃない。
とりあえず、社交辞令として喋る言葉を探した。
その間に、

「江梨香さん、私のお父さん……あれ、本当のことなの」
以下略



21: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/09/22(木) 22:26:01.06 ID:9IglMqLM0
杉原さんと多少話している内に、彼女のことが何となくわかってきた。
私と同じで気弱な性格みたい。
孤立するのが怖くて、南合に引っ付いてみたものの、
逆に利用されてしまい、困惑しているらしい。
おまけに脅される始末。
以下略



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