過去ログ - 【ひなビタ♪】霜月凛「やまびこ」
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10: ◆khUorI/jDo[saga]
2016/09/28(水) 19:10:06.95 ID:tZz1LPe6o
 思いつく限りの言葉を叩きつけて、息を全て吐き出して……直後に硬直した。
自分の言葉の意味を、理解したくない。

「――りんちゃん」

 喫茶店の声に情けなくビクリと肩を震わせて、ついでに手を握りしめたままであることに驚いて、大慌てで放した。
じわりと手汗をかいていたことに気付いて心臓が止まりそうになった。
伏せた顔を上げられない。耳の熱さで、自分が今どういうことになっているか大体察しがついてしまう。

 先の言葉を言い終えるまでに、私は自身を突き動かした衝動を正確に理解してしまっていた。要するに、これは独占欲だ。
私の言葉で彼女を安心させてあげたかった。誰よりも私自身がこの子を甘やかしてあげたかった。
その役目を洋服屋に譲りたくなかっただけの話なのだ。それが、喫茶店にどの程度伝わっただろうか。
私の言葉は喫茶店にとってどれほどの意味を与えたのだろう……。

 その時、くすりと笑い声が聞こえた。

「私、そんなりんちゃんは初めて見ました」

「……そうでしょうね…………私も初めて見るわ」

 おそるおそる顔を上げると、喫茶店はまたへにゃりと笑って、びっくりしました、とでも言いたげに肩を竦めた。
喫茶店はそのまま私の手を両手で包んで、まるで温めるようにすりすりと撫でた。
私にはその行動の意味は分かりかねたけれど、やめなさいと照れ隠しに振り払うことは不思議とできなかった。

「ありがとうございます、りんちゃん。私、とってもとっても嬉しいです」

「……別に、貴方の問題を解決できたわけでもないけれど」

「それでも嬉しいんです。……照明、点けちゃいますね。いいですか?」

「? ええ、構わないわ」

 なぜか私に確認を取ってから、喫茶店は私の手を放してスイッチパネルに向かった。
包まれていた片手に残る彼女の温もりがやけに照れくさく感じて、同時に先の確認の意味を理解した。
あの子は私に気を遣ったのだ。暖色の照明が店内を柔らかく照らした時、私は耳を髪で隠して喫茶店に背を向けていた。

「……珈琲のおかわり、もう一杯どうですか?」

 からかうような語調に仏頂面を返すこともできず、私は振り返らずに小さく頷いた。


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