過去ログ - 白菊ほたる「幸せ願う」クラリス「笑顔の偶像」
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◆kiHkJAZmtqg7
[saga]
2016/10/13(木) 22:29:38.38 ID:mzegZ2Br0
「……違うんです。収録のときもつらかったけど、本当につらいのは。私、アイドルじゃなくなっちゃいました」
「おや……。それは、どうして?」
目を閉じて薄く笑う。こうやって表情を作らないと、すぐに泣いてしまいそうで。
「私、疫病神なんです。関わった人とか場所を不幸にしちゃう呪われた子。私がいたプロダクション、倒産しました。これで3度目だなんて、信じられますか?」
「今回はお仕事を貰えて、それも一つだけじゃなくて、いくつも。凄いチャンスでした。……でも、でも、そこまででした」
男の人は、神妙な表情で耳を傾けている。
ほとんど初対面の相手のこんな話もちゃんと聞いてくれる。……その姿が、誰かと重なった。
だから、話を続ける。
「私がいると、行く先々で不幸とかアクシデントがおきて……それで一緒に仕事したくないって思われたみたいです。はい、それがこの前の収録でした」
「改めて実感しちゃいました。私なんかじゃ、みんなを幸せにするアイドルにはなれっこないんだ、って」
「そんなことはありません」
不意に返ってきた言葉。欲しかったけど、欲しくない。
もう、諦めなきゃ。ずっとそう思っているのに、未練がましく決心は鈍るばかり。
「そんなこと、あります。だって私は人を幸せにできない、むしろ逆なんです。だからアイドルになる資格なんて、あるはずありません」
自分で拒んでおきながら、その言葉が胸に刺さってじくじくと痛む。
なんで、よりにもよってアイドル事務所のプロデューサーさんにこんなことを言っているんだろう、そんな言葉も頭に浮かんで。
「アイドルになりたくはありませんか」
その一言に揺さぶられる。それでも、どんどんと私は頑なになってしまう。
「っ……なりたい、なりたくないじゃなくて、なれないんです!なっていいはずが、ないんです……」
「誰かに幸せを届けたいと、幸せになりたいと、そう、願っているのでしょう?」
「やめてっ……ください………。私、私は……」
「資格なんて、それだけで十分です。あなたはアイドルになれる」
「でも……!」
「ん……そうですね。……言葉が違いました」
私がどうしたいのか、何を伝えたいのか、自分でもわからないのに。
彼は何か納得したように頷くと、改めて私に向き直り片方の手を差し出す。
「私に、あなたをアイドルとしてプロデュースさせてください」
「……!」
「私があなたをアイドルにします。だから、共に目指してみませんか?」
俯いていた顔を上げる。
それは……それは、私が知らない言葉で、だからこそ気づいたんだ。
私はアイドルになりたい。だけど私のその気持ちだけじゃ、アイドルにはなれなかった。
私は1人だと思っていたから。いや、事実独りだったのかもしれない。
アイドルは私の想いと、アイドルの私を求める誰かの想いで出来上がるものなんだ、って。そんな、今更な気づき。
じゃあ、背中を押してくれる言葉は、差し伸べられた手は、つまり。
この手を掴めば、私はアイドルになれるのかな。
……なりたい。可哀想な女の子で終わりたくなんてない。
おそるおそる、手を伸ばす。
「お願い、します……。私を、アイドルにしてくださいっ……!」
触れた手は優しくも力強く、私を引っ張り上げてくれる予感を感じさせた。
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