過去ログ - 白菊ほたる「幸せ願う」クラリス「笑顔の偶像」
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6: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2016/10/13(木) 22:31:33.54 ID:mzegZ2Br0
――アイドルになりませんか。あなたの歌声はたくさんの人の心に届く。この教会を救うことにも、繋がることでしょう。

その言葉を聞いたときに、ことのほかあっさりと受け入れたいと願うことができたのは。

――私、頑張りますから。だから、クラリスさんもほんのちょっぴりでいいので、応援してくれると嬉しいです。

困ったように下がった眉と、可愛らしい笑顔が素敵な女の子のことを覚えていたからでしょう。



さて、教会という場所は少しずつ、人々の中で価値を失っていました。

この国では宗教的なものが強く重視されることは少ないですから、小さな教会など尚更です。

そんな中でどうにかやっていきながらも、終わりのときは近づいていました。

そうして、施設の老朽化もあったのでしょう、不幸な事故によってとうとう教会の門戸を開き続けることは難しくなってしまいます。

どうにかして教会を再建するための資金を集めなければならなかった私に、手を差し伸べてくれたのがプロデューサー様でした。

そしてこれはスカウトを受けてしばらくしてから知ったことなのですが。

どうやらプロデューサー様が私のような人間を不意にスカウトして来ることは、それほど珍しくはないらしいのです。

「あ、お帰りなさいプロデューサーさん!……と、スカウトですね。それじゃ、お話もあるでしょうしお茶淹れてきますっ」

事務員さんのそんな声が聞こえてきたのでこっそりと簡易キッチンに先回り。

お茶汲みなら他の仕事が残っている事務員さんよりも、手が空いている私の方が適任でしょうから。

「お茶の用意でしたら、私に任せていただけないでしょうか」

「あ、それじゃあお願いしちゃいます!それと、できれば私の分も淹れてくれると嬉しいなー……なんて」

「ええ、もちろん。それでは、4人分ですね」

「やったー、クラリスさんが淹れる紅茶は美味しいですからねぇ。あ、私ミルクティーが良いです。お砂糖たっぷりで!」

ぱたぱたと上機嫌で走っていく事務員さんを見送って、ポットやマットを取り出します。

この事務所はどなたの趣味なのか、かなりしっかりした道具が揃っているので気合が入ってしまいますね。

……と、いうのも、どうやらこの事務所には紅茶好きの方がやけに多いようで。

私もその1人であるというわけでした。

さて、ミルクティー向きの茶葉も残っていたので、それを使うことにしましょう。

紅茶の淹れ方にはゴールデンルールと呼ばれるものがあります。

全てを厳密に遵守する必要はありませんが、それを意識して淹れれば相応に美味しい紅茶が仕上がりますね。

そうやって淹れた紅茶と、角砂糖と蜂蜜に、忘れてはいけないたっぷりのミルク。

それらをトレーに乗せて、それでは、私たちと共に歩むことになるかもしれない子のお顔を見に行きましょうか。

ミルクティー、お口に合うと良いのですが。


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