15: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/10/19(水) 18:12:55.68 ID:O4qi00qi0
きっと思いつきではなくて、初めからぼくを誘うつもりだったのだろう。
ヘレンさんの服装は白い無地のブラウスと、タイトなジーンズに濃い紫色のショルダーバッグ。普段と比べると地味と言えるし、換言すれば目立たない格好だった。
スーツの男と歩いても自然な格好。ヘレンさんは意外と気遣いのできる大人なのです。
じんわりと汗の滲むなか、ヘレンさんに連れられて繁華街を歩く。高級店だったらどうしようなんて不安になったけど、ヘレンさんが立ち止まったのは意外な店の前だった。
「ここよ!」
「え、ここ?」
「さあ、入りましょう」
ぼくの疑問を無視してヘレンさんは店のなかに入っていった。ぼくは改めて看板を見直す。どう見てもラーメン屋だった。気を使ってくれているのかな。嬉しいような申し訳ないような気持ちになった。
後に続いて店に入る。四人掛けのテーブルが三脚。それと十人前後が座れそうなカウンターのある、ラーメン屋としては比較的広い部類の店内だった。客入りはそこそこで、半分ぐらいが埋まってる感じか。もしかしたらピークを過ぎているのかもしれない。
ヘレンさんは堂々と言う。
「へい、大将! いつもの!」
どうやら常連らしい。なんか意外だ。と思ったけれど、静まり返る店内。客はまだしも、店員さんも固まっている。
頭が痛くなってくる。店員さんの視線がぼくに向いたので、軽くお辞儀しておいた。
「……えっと、どれですか?」
店員さんはぼくにそう訊いてきたので、ぼくも同じようにヘレンさんに訊ねた。通訳しているみたいだと思って、どちらかと言えば緩衝役なことに気づいてため息が漏れた。
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