48: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/10/24(月) 00:11:02.41 ID:s0PoLOR90
人の体が空に浮き、水月(くらげ)のように漂うなんて。
そんなこと、現実的に考えてあり得ない……それは、誰だって知っているし、不可能だと頭でも理解はしている。
けれども、実際の彼は空にいた。
体はふわふわと、水に浮かぶよりも軽やかに、星の瞬く夜の空に浮いていたのだ。
「ビックリするのは分かるけど、あんまり慌てると、そのまま地面に落ちちゃうよー?」
そんな風に、事態を飲み込めないでいるプロデューサーに向けて、聞き覚えのある声がする。
見れば先ほどの銀髪少女がその手にお椀を持ったまま、
何もない空中を歩くようにして、こちらにやって来るところだった。
「どう? おにーさん。初めての月見の感想は」
「つ、月見って……一体、どういうことだい!? 俺は、確か、お椀に入った水を飲んで……!」
「だから、お月見だって。ほらー、お椀をちゃんと持たないと」
少女がプロデューサーの手を取ると、そのままお椀の中身をこぼさないよう、ギュッと握り直させた。
「中身を失くすと、帰れなくなるから。気をつけてよー」
もはや、プロデューサーは言葉も出ない。
ただ彼女が言うように、小さなお椀の中身をこぼさぬよう、
痛いぐらいにしっかりと、両手で支えるだけである。
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