10:名無しNIPPER[sage saga]
2016/10/22(土) 12:49:25.79 ID:F96eyaHp0
工房の外に出ると、気持ちの良い風が吹いていた。
肇が持ってきてくれたお茶を飲みながら縁側に座っていると、普段の生活が慌ただしいだけに、老後はこういう家でのんびり過ごすのもいいもしれない、なんて思ってしまう。
「イメージは…出来ているんです。アイドルになる前の私では創れなかった器が、今ならきっと…」
そう話す肇の額には、また皺が出来てしまっていた。それをほぐすように、額を再度拭いてやる。
「あ…泥でもついていましたか?」
「いいや。…なあ肇、最初のダンスレッスンの時のこと、覚えているか?」
「それは勿論…あっ」
「今の肇は、あまり楽しそうには見えなくてな。真剣なのはいいことだけど…」
「できたときのことを思いながら、失敗すらも楽しんで……ふふ、大事なことを忘れていました」
「よかった、肇が覚えていてくれて」
これで『なにかありましたっけ?』などと言われていたら相当凹んでいただろう。
「やっぱりPさんは凄いです…私の不安も拭い去ってくれるのですから」
肇から向けられる信頼の視線がくすぐったくて思わず目を逸らすと、一台の軽トラックがこちらに向かってきているのが見えた。
「なあ肇、あれってもしかして…」
「おじいちゃんの車ですね」
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