過去ログ - 聖來「夢と現とあたしと貴方と」
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8:名無しNIPPER
2016/10/26(水) 01:34:55.81 ID:DdD2BNiL0
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轟音のジェットエンジンが空に消えていく様を、二人で黙って見上げていた。

ドラマや映画でお馴染みの展望台に行きたい、とは聖來のリクエストだ。

展望台で天望する事15分。

いくつもの航空機が飛び交い、降り立ち、見えないけれども、何人もの人間が移動している。

明日のライブはタウムズスクウェアのど真ん中で行う予定だが、果たして動員人数はこの移動よりも多いのだろうか、少ないのだろうか……。

我ながら馬鹿らしい思考である。

「ねえPさん」

ジェットエンジンの音の狭間から、彼女の声が聞こえた。

「何だ?」

声を張らなければ掻き消えてしまいそうで、少し心細くなった。

「あたし、まだ飛べるよね?」

「あ?」

「あたしまだ飛べるよね!?」

「どういう意味でだ!?」

先程のカフェの話を引きずっている気がして、少し胸が騒いだ。

夕景ってのはどうにも気が小さくなる。

「あたし、まだまだ跳べるからね!」

どこか悲痛な表情で、切実な言葉を精一杯投げ掛けて来ているように見えた。

(……なるほど、そういうことか)

思わず頰がほころんだ。


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