過去ログ - 高垣楓「私、猫になりたいんです」
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105:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:25:32.08 ID:1sM9NdHQ0
「ま、拒否ってた理由はさっきの通りだけど。
 あんたに会わせてもいいかなって思ったのは、昨日がはじめて。
 あんな豆粒みたいな写真を頼りに一年間も通ってたんだって知ったら、根負けせざるをえないでしょ」

「あ、じゃあ、昨日は二人で飲んでたんですね」
以下略



106:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:25:58.30 ID:1sM9NdHQ0
 やがて言いたいことは終わったのか、マネージャさんは手を挙げて煙草の灰皿を探しにいってしまいました。
 後は、あんたたちでやってちょーだい、そんな風にみえます。

 辺りはしんと静か。
 遠く、国道から車の音が聞こえるくらいです。
以下略



107:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:26:25.68 ID:1sM9NdHQ0
「……私を、なぜ、アイドルに誘うのですか?」

 こぼれた言葉は、震えていたかもしれません。
 あらゆる恐怖や不安が、先の見えない夜みたいに私へ襲いかかってきます。

以下略



108:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:26:51.92 ID:1sM9NdHQ0
「……さっきのは言ってしまえば捻り出したもので、もっとシンプルな理由があります。
 それになら、ぜんぶを賭けても良いと思うんです」

 一番根っこの部分、全ての理由。
 月明かりの中で、プロデューサーさんは二、三度目を瞬かせて。
以下略



109:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:27:20.53 ID:1sM9NdHQ0

     9

 空が白み始める頃合いに、私とサバは家へ帰り着きました。
 買い置きの猫缶をむしゃむしゃと頬張るサバを眺めながら、色々な事を考えました。
以下略



110:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:27:50.65 ID:1sM9NdHQ0
 サバはぺろりとご飯を平らげて、軽やかに跳躍しました。
 軽快な歩幅でガラクタの山を通り抜け、
 窓辺からじっとガラス越しの空を見上げます。

 その外には途方もないほど広い世界。
以下略



111:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:28:20.36 ID:1sM9NdHQ0
 かちゃん、と小さな音がしました。
 私は無意識に鍵を外していました。

 サバはすぐさま自分の力で引き戸をあけ、テラスへと躍り出ます。

以下略



112:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:28:50.50 ID:1sM9NdHQ0
 サバが前足で顔を拭った後、私に何かを語りかけるように鳴きました。

「——ありがとう」

 彼がそう言ったのかはわからないけれど。
以下略



113:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:29:17.98 ID:1sM9NdHQ0
 街が少しずつ目覚め始めているのを感じます。
 太陽の位置が少し高くなり、光の色が変わりました。
 新聞配達のアルバイトさんが原付で風を切りながら駆けていきます。
 どこかのおじいさんおばあさん夫婦が、にこやかに笑いながら朝の散歩をしていました。
 近くのお家から焼き魚の匂いが風に乗って運ばれてきます。
以下略



114:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:29:46.82 ID:1sM9NdHQ0
 部屋の中に戻り——段ボールを片付けなきゃ、改めてみるとガラクタが多いなぁ、ねこじゃらしはどうしよう——
 色々な事を考えながら、私はベッドへ放り出していた携帯電話を手に取りました。

 登録したばかりの番号を探して、ボタンを押します。

以下略



115:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:30:13.76 ID:1sM9NdHQ0
 電話口に静かな沈黙がおりました。
 プロデューサーさんは、私の言葉を待っています。
 そうでなければ駄目だと、お互いがわかっていたのです。

 私は、何度か息を吐きました。
以下略



116:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:30:49.33 ID:1sM9NdHQ0
「私、猫になりたいんです」

 一拍の沈黙の後——じゃあ、ねころんで聞きますね、そんな返しがあって。

 思わず笑ってしまうと共に、あぁ、これでいいんだ、と思いました。
以下略



117:名無しNIPPER[saga]
2016/11/12(土) 20:35:42.11 ID:1sM9NdHQ0

以上です!
ここまで読んでくれた方、ありがとうございました。
ご意見、ご感想などいただけるとうれしいです。

以下略



118:名無しNIPPER[sage]
2016/11/12(土) 20:53:27.32 ID:lARyDRLEO
面白い


119:名無しNIPPER[sage]
2016/11/12(土) 21:08:20.97 ID:KgJ0/A+wo
おつおつ


120:名無しNIPPER[sage]
2016/11/12(土) 22:06:55.59 ID:xB3McxTzo

いい話だった


121:名無しNIPPER[sage]
2016/11/13(日) 01:13:52.92 ID:2O/oRijeo
お疲れ様でした


122:名無しNIPPER[sage]
2016/11/13(日) 07:33:07.88 ID:K4xIRapPo
良い話だったけど、苦労して探してくれた猫をその日のうちに放しちゃうのはどうかなって思う


123:名無しNIPPER[sage]
2016/11/13(日) 16:51:44.26 ID:hafr0Dwoo
パンツの人だ
いい話でした


124:名無しNIPPER[sage]
2016/11/14(月) 13:56:17.86 ID:w0ctIvOTo
いい話や…


125:名無しNIPPER[sage]
2016/11/16(水) 07:31:15.49 ID:iiQ2PL2lo
面白かった
サバが居なくなるのが少し


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