過去ログ - 幸子「今日、私はボクを卒業します」
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2016/11/26(土) 18:18:21.99 ID:i8kqGCrS0
 「何か手伝うことあるか?」 
  
 「プロデューサーさんは落ち着きがありませんね、座って待ってることもできないんですか?」 
  
 「手持無沙汰は落ち着かない性分でね。プレゼントに生花もあるだろ、お茶は後でいいから先にそいつらを何とかするぞ」 
14:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:20:29.35 ID:i8kqGCrS0
 「幸子は普段自炊とかするのか?」 
  
 台所のシンクで花を活けながらプロデューサーさんが訊きます。 
  
 「えぇ、寮にいる間に色々教えてもらったので一通りは作れますよ」 
15:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:22:35.18 ID:i8kqGCrS0
 気付けば作業が止まってしまっていて、あわてて未開封の箱を掴みます。 
 たまたま手に取った長方形のそれは、楓さんからの贈り物です。 
  
  
 幸子ちゃんと同い年のものにしてみたの―― 
16:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:23:15.52 ID:i8kqGCrS0
 「幸子、花束は全て済んだぞ。そっちはどうだ?」 
  
 「あ、はい! まだ終わってないです!」 
  
 「数が多いから無理もないか」 
17:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:25:29.14 ID:i8kqGCrS0
 「お待たせしました」 
  
 「これワインじゃねーか。車だから飲めないって」 
  
 「乾杯するだけです。プロデューサーさんは飲まなくていいですから、ね!」 
18:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:26:41.51 ID:i8kqGCrS0
 ワインとオープナーを受け取って開けようとしますが、恐る恐るといった感じで何だか面白いです。 
  
  
 「なぁ……これはこの使い方で合ってる?」 
  
19:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:28:59.66 ID:i8kqGCrS0
  
  
  
 「では、幸子の生誕を祝して――」 
  
20:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:30:35.91 ID:i8kqGCrS0
 グラスを軽く合わせると、小さな鐘の音が静かな部屋に生まれました。僅かな、それでいて確かな余韻を残して。 
 再び静寂に包まれた私の部屋で、プロデューサーさんは目を細めてグラスワインを見つめています。 
 味覚以外の五感で味わっているような、そんな感じです。 
  
  
21:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:32:54.37 ID:i8kqGCrS0
 「ちょ、幸子は飲んでも構わないが酒そんな強くないだろ。ワイン一気にあおったら回るぞ」 
  
 その通りです。 
 すでに体の奥が熱くなっている感覚がします。心臓も高鳴っています。 
 でも、それはワインのせいだけではありません。 
22:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:34:54.43 ID:i8kqGCrS0
 幼いころから両親にカワイイと溺愛され育てられました。実際カワイイですからね。 
  
 このカワイさを世界にアピールするため、アイドルになると決めました。 
 カワイイ自分をもっと見てもらうために。褒めてもらうために。愛してもらうために。 
  
23:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:36:29.18 ID:i8kqGCrS0
 プロデューサーさんに褒められたいと。 
  
 プロデューサーさんに認められたいと。 
  
  
24:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:37:51.65 ID:i8kqGCrS0
 自分の気持ちに気付いてから、たくさん悩みましたよ。アイドルに恋愛なんてご法度です。 
  
 ファンのみなさんのために。プロデューサーさんのために。 
 『ボク』の想いは胸にしまって、『私』がアイドル輿水幸子でいるために。 
  
25:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:43:04.64 ID:i8kqGCrS0
 「――なんて、言っちゃいましたけど」 
  
 「……」 
  
  
26:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:44:32.23 ID:i8kqGCrS0
  
  
  
  
  
27:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:47:08.71 ID:i8kqGCrS0
 沈黙のなか、心臓の鼓動だけが大きく聞こえます。 
 プロデューサーさんにまで聞こえてしまうんじゃないかと心配なくらいです。 
  
 どれくらいの時間が経ったんでしょう。数秒とも数分とも思える時間でした。 
  
28:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:49:17.11 ID:i8kqGCrS0
 「これからは胸を張って自分のことを私と呼べます。明日からもプロデュース、お願いしますね」 
  
 「あぁ任せとけ。それと、ありがとうな」 
  
 「こちらこそ、です」 
29:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 18:56:42.48 ID:i8kqGCrS0
 窓を開けると冷えた空気が頬をはたきます。 
 厚い雲で星は見えませんが、その雲から粉雪が舞い落ち、街中のイルミネーションに溶けていって。 
 それはまるで星屑に包まれているかのようで。 
  
  
30:名無しNIPPER[saga]
2016/11/26(土) 19:00:54.76 ID:i8kqGCrS0
 遅刻だけど幸子誕生日おめでとう。 
 ここまで読んで下さった方に、花束を。 
31:名無しNIPPER[sage]
2016/11/26(土) 19:02:54.15 ID:44O6khczo
 おつ 
 切ねぇなぁ... 
32:名無しNIPPER[sage]
2016/11/26(土) 22:08:50.24 ID:4MLJmto70
 ちゃんと分かって花を添えてくれる楓さんもすばらしい 
33:名無しNIPPER[sage]
2016/11/27(日) 05:51:53.26 ID:8bTzuMgV0
 さっちゃん…… 
 大人になったんだね 
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