過去ログ - 小梅「ありがとうを物語にのせて」
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10: ◆REViNqJsY2
2016/11/27(日) 15:15:05.72 ID:Uojde39To
少し迷ってから、胴にゆったりと回されたきらりさんの手に、私はそっと自分の手をかさねる。芯から伝わる温もりに背を押されるようにして、私は強ばった口を開く。
「……き、きらり、さん」
喉にはまだ少し怯えが残っていて、いつも以上につっかえながら喋る。なぁに、と聞き返すきらりさん。それに合わせ、その大きな体に支えられながら言葉を探す。
「その、聞いて欲しい、お話が、あって……ぜ、全然怖くない、やつ」
「いいよぉ。どんなお話なの?」
「えっと……暗かった女の子の、お話」
私は一生懸命に考え、声に乗せる。暗くて独りぼっちだった女の子が、色んな人に会って、ちょっとだけ明るく前向きになれるお話。顎を軽くあげ、真上に向けて必死に語りかける。そこにきらりさんの顔があって、その大きな目で私のことを見つめてくれていると信じられるから。
言葉はしょっちゅう見つからなくなるし、ストーリーだって前後してたかもしれない。そもそも話すのが得意じゃないんだし、あちこち聞き取りにくくもあっただろう。
それでも、きらりさんは時折相づちを交えながら、耳を傾け続けてくれた。笑っちゃうようなシーンでは鈴が鳴るように笑ってくれるし、緊張するようなシーンでは息を詰めて聞いてくれる。喋っている方が自然と楽しくなれるような、そんな聞き方だった。思えば莉嘉ちゃんもみりあちゃんも、きらりさんと話す時はみんな笑顔で話している。
多分、ものすごく聞き上手なんだと思う。本当に人の話を聞くのが大好きで、それに全力で入り込むことが出来る人。きらりさんのころころ変わる表情が嬉しくて楽しくて、私たちはこの人に話しかけたがる。
「……でね、女の子は出会ったの……背の大きくてとっても可愛い、星みたいにきらきらした女の人に」
相づちも未だに重ねたままの手の平も変化はなかったけど、きっときらりさんは気づいてるだろう。私が誰のことを言っているのか。ちょっと気恥ずかしくて、頬が熱を持つのを感じながら、心の奥の方から言葉を引っ張り出してくる。
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