103: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:06:52.76 ID:9ecZiZ/N0
「とにかく、やれることはやるべきですよ。意味がないわけないです。意味はあります」
「……まぁ助けになろうとしてくれてる幸子の言葉を無下にはしないけどな。それじゃあ、どうやって思い出す? 闇雲に考えても駄目だったぞ」
「プロデューサーさんは、自分のことになると本当にポンコツですねえ」
104: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:08:51.84 ID:9ecZiZ/N0
「なるほどー、ボクっ娘のワタシ。それもカワイイかもしれませんねえ……」
は、と気付き、幸子は咳払い。
「えーっと、そ、その意気ですよ、プロデューサーさん。これで、元の世界のワタシは、ボクっ娘だったってことがわかりました。はい。他はないですか?」
105: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:10:16.61 ID:9ecZiZ/N0
「いえいえ、何をやさぐれてるんですか。まだ希望はありますし。この世界で思い出せないなら、また別の世界で思い出せば良いんです」
「別の世界で?」
「はい。別の世界には、またその世界のワタシがいるんですよね。そのワタシと、元の世界のワタシを、また比較してみれば良いじゃないですか」
106: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:12:37.20 ID:9ecZiZ/N0
「引き算を、続ける……」
この世界の幸子は、元の世界の幸子とは違う。
何故なら一人称が違うから。
107: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:14:04.61 ID:9ecZiZ/N0
鍵が、外れた気がした。
じわりと呼吸が楽になるのを感じた。
幸子の言う方法は、元の世界へ戻れる具体的な方法ではないかもしれない。
108: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:15:28.23 ID:9ecZiZ/N0
「さあ、善は急げです。もう寝ちゃいましょう」
「……うん? まさか、ここで?」
尻の下、ソファを俺が指さすと、
109: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:16:33.32 ID:9ecZiZ/N0
「さあプロデューサーさん、目を閉じてください。もう、何も考えちゃ駄目ですよ。心を安らかに、目を覚ましたら、また頑張れば良いんですから」
そう前置きをして、幸子は小さな声で歌い始めた。
アイドルの生歌を耳にしながら眠れるなんて贅沢な体験だよなあ、と思いつつ目を瞑る。
110: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:18:36.19 ID:9ecZiZ/N0
ベッドの上で目覚めて、事務所へ行くと、幸子が川島瑞樹と談笑を交わしていた。
「あ、プロデューサーさん、おはようございます。今日のボクもカワイイですよね?」
「ああ、今日の幸子も可愛いな」
111: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:19:59.69 ID:9ecZiZ/N0
「あら、収録の時間ね。私そろそろ行かなくちゃ」
腕時計に視線を落とし、川島さんがそう口にする。
「あれ? もうそんな時間ですか?」
112: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:22:00.76 ID:9ecZiZ/N0
「プロデューサーさん」「幸子」
声がハモった。
幸子から話すよう右手で示すものの、幸子は「プロデューサーさんから話してください」と強い口調で返してくる。
俺は改めて口を開いた。
113: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 23:24:40.30 ID:9ecZiZ/N0
「だから幸子。この世界のお前のことを俺に教えてくれないか」
うんうんと頷きながら、幸子は答えを返す。
「なるほど、謎が解けましたよ」
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