過去ログ - P「輿水幸子は無数に存在する」
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77: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 21:48:57.24 ID:9ecZiZ/N0
「輿水幸子のプロデューサー兼マネージャーを務めています、国近と申します。ご存じかと思いますが、今日はクリスマスライブで忙しいのです。お帰りいただけますか」

「……は?」

 受付でごねること数十分、現れた男は俺の顔を見るなり、しかめ面でそう言い放った。

 プロデューサーは俺だ、と叩き付けてやりたかった。

 しかし、言葉に引っかかりを覚え、思考を巡らせている内に、理解できてしまった。
 幸子一色の部屋も、所属事務所の情報が落ちていないのも腑に落ちる。

「――俺は、幸子の、一ファンに、過ぎないんですね」

「残念ながら」

 訝しげに眉をひそめつつも常識的な言葉を吐く彼は、なんとか穏便にこの場をおさめようとしているのだろう。

 俺もプロデューサーだ。
 プロデューサーだった。
 彼の気持ちはわかる。

 俺は「失礼しました」と言葉を残して、事務所を去った。


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