8: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:48:30.21 ID:81cm0N8d0
と、笑顔を見せてすぐに「でも」と橘さんは切り出した。
「ひとつ不満があります」
思いもよらない言葉にぼくは焦る。デザインが露骨すぎたのか。いや、橘さんがそこに不満を言うとは思えない。
ぼくはどうしたのと首をかしげた。
「名前、ありすと呼んでもらってません」
「えっ、そこ重要?」
これが良くなかった。思春期の子供には些細なことが重要であることが多い。わかっているつもりだったのに、ぼくは失念していた。
わなわなと震えた橘さんは手に持った荷物を床に置いて、
「いつになったら下の名前で呼んでくれるんですか!」
号泣した。まじ泣きだった。
「もーーーー!!」
言葉にならない声がロビーに木霊する。周囲の人の視線がぼくに突き刺さる。どう考えてもぼくが泣かせた構図になっていた。受け付けのお姉さんがギロッと睨んでくる。
きっと卒業式を終えて感傷的になっていたのだろう。そして感情的にも。いやしかし、泣くほどか? 考えてみると混乱する。
とにかく泣き止んでもらわないと。
「わかったからわかった。ありすちゃん、これから呼ぶから」
時すでに遅し。うわぁぁんと泣き続けるありすちゃん。どうにでもなあれ、とぼくはありすちゃんの頭を撫で続けることしかできなかった。
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