9: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/12/09(金) 22:49:56.03 ID:81cm0N8d0
それから五分後、泣き止んだありすちゃんと車に移動した。走りだした車内にはなんとも言えない空気が漂う。
気まずい。なにかを話さないと。そう思っても言葉がうまくでてこず、口をぱくぱくさせるだけだった。
「あの……ごめんなさい」
先に口を開いたのはありすちゃんだった。気を使ってくれたのだろう。申し訳なく思う。
「いや、ぼくこそごめん。そんなに気にしているとは思ってなかった」
喜んでいるとも思わなかったけれど、まさか泣くほど嫌だったとは想像していなかった。まあ、今日でなければ泣きはしなかったかのかもしれない。でもありすちゃんにとって重要であることには変わりない。
ありすちゃんはうぅと恥ずかしそうに唸った。
「違うんです。嫌だったわけじゃなくて……、ただちょっと距離を感じたんです」
「距離?」
「初めは気を使ってくれたんだな、って嬉しかったんです。やっと大人扱いしてくれんだって。でも、段々苗字で呼ばれると余所余所しく感じて……」
きっと年齢を重ねて、精神的にも落ち着いた頃に色々考えたのだろう。周囲のアイドルとプロデューサーは気軽に名前で呼び合っているのだ。不安に思ってもおかしくはない。
ぼくは努めて優しい声音で応える。ありすちゃんの不安を払拭する。
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