過去ログ - 【DQ7】マリベル「アミット漁についていくわ。」【後日談】
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593: ◆N7KRije7Xs[sage saga]
2017/01/11(水) 19:37:34.89 ID:LLGD6zi70

マリベル「…………………。」

夜も更けた頃、満天の星空の下で少女は一人、
酒で火照った身体を覚まそうと村の隅に置かれた角材に腰かけて煌々と揺らめく灯を眺めていた。

マリベル「…バカみたい……。」

少女には少年の行動がわかりかねていた。
前ならば男たちだけで温泉に浸かっていたはずの彼が今日ばかりは誰ともつるもうとせず、
それどころか少女だけが入らないからというだけで自分まで入らないと言い出す始末。
あまつさえその彼は自分と入りたいと言ってのけたのだ。

“本当はさ 一緒に 入りたかったなって。”

今まで決して彼が自分の願望をそんな形で口にすることはなかった。
それが他の男たちがむき出しにする邪な欲望だったのかはわからない。
しかしあの時少年が見せた顔はそれとは違って、どこか自分の羞恥の気持ちを隠しているように見えた。
それがますます少女を混乱させていた。

“ばっかじゃないの!? なんで あたしが あんたと……。”

思えば先ほどは驚愕と恥じらいから咄嗟であんな風に言ってしまったが、少々あれは言いすぎだったかもしれない。
自分と彼は既に恋人なのであって友達でもただの幼馴染でもない。
であれば入浴を共にするというのはさほど不自然なことではないのかもしれない。
しかしどういうわけか未だに自分の中で自らのすべてを晒してしまうことへの不安が先を行ってしまい、それを許そうとしないのだった。
たとえ相手が自分の好いた幼馴染であったとして。

マリベル「…はあ……。」

少女は基本的に相手がどう思おうが自分の思ったことはすべて言ってきたし、自分の気持ちに嘘はつかないようにしてきた。
時にはそれが人に自分を以て“わがまま”と言わしめる要因でもあったのだが、本人はそれをあまり気にしては来なかった。
今でこそ場面をわきまえられるようになったが、基本的に彼女の姿勢は変わらない。

しかしそんな彼女もあの少年と何かをしたり何かをしてもらうようなことに関しては正直に口に出せないこともあった。
様々な出来事を通してこれまでの旅も、そしてこの旅の中でも彼との距離を詰めていっていたはずだったが、
どうにも越えられない一線というものがあったらしい。

マリベル「やっぱり 恥ずかしいわよ……。」

そう言って少女は誰に見られているわけでもないのに両手で紅潮した頬を隠す。
彼にも散々正直にいろいろなことを言ってきたはずだったがこればっかりは言えない部類だったようだ。

マリベル「……ぶるっ………。」

あれこれ悩んでいるうちに気付けば体はすっかり冷え、
心地よく吹いていたはずの風はいつの間にか北風に変わり寒さを運んできていた。

マリベル「…さむい……。」

火に当たり寒さを紛らわそうとするも体の芯が冷えるような感覚に思わず身がすくむ。

マリベル「あっ……。」

なんとか暖をとれないものかと辺りを見渡した時、ふと煙の立ち上がる井戸が目に入った。

マリベル「温泉かあ……。」



“あの人たち 明日は 早いから 深夜は 入らないんだってさ。”



先ほど少年が言っていた言葉を思い出す。

マリベル「…………………。」

井戸までやって来た少女は耳を近づけて音で中の様子を探る。

マリベル「……誰も いないみたいね。」



“行くなら今しかない。”



そう思い立ち少女は急いで井戸の中へと降りて行くのだった。





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