過去ログ - 花丸「はなまるぴっぴは善い子だけずら」
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2016/12/25(日) 22:17:51.52 ID:O8fGFwM8o

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 花丸と善子の意地の張り合いに決着が付かないまま、
十二月二十四日のクリスマス・イヴの夜を迎えてしまった。
本当なら、今日は善子とロマンティックな夜を過ごすはずだったのに。
部屋で一人、9.7インチのタブレット画面を見遣る花丸の胸には、未練が閊えている。

 高校に入学した当初はノートパソコンさえ満足に扱えない花丸だったが、
善子の指導もあって、今ではインターネットへの接続も手慣れたものとなった。
今、動画サイトを画面に映して各地のイルミネーションを見れるのも、善子のお蔭でもある。

 神戸も長崎も日本三大夜景に名を連ねるだけあって、イルミネーションも錚々たるものがあった。
画面越しにも映える絢爛さに、花丸も息を呑むしかない。
殊に花丸の気に入ったのは、函館のイルミネーションだった。
積雪と降雪の二種の雪が電飾と相乗して、ホワイト・クリスマスをこの上なく綺麗に演出している。
北海道に住むセイントスノーの二人は、この夜景をリアルに堪能できるというのだから羨ましい。
イルミネーションの下でホワイト・クリスマスを恋人と過ごす、というシチュエーションは、
夜景などなく降雪も稀な南方の田舎に生まれた花丸の乙女心をこの上なく擽った。

「善子ちゃん、どう思ってるかな」

 花丸の口から不意に独り言が零れた。
デートしたいシチュエーションが今の動画ならば、デートしたい相手は紛れもなく善子だ。
今はきっと『クリスマスのスペシャルなライブ配信』とやらの最中だろう。

 善子のアカウントなら知っている。
見に行こうか。と、ブックマークしてあるリンクをタップしかけて、止めた。

「どうでもいいずら」

 強がる花丸の意思は、善子を気にする行為など許しはしない。
内心で愛しんでいても、先に行動してしまっては負けるような気がした。
善子が花丸の気持ちを分からないうちは、容易に許してはならないのだ。
戒めるように、花丸はそう強く自分に言い聞かせた。



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