12:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:49:50.21 ID:tFwGSLOi0
私は答えられませんでした。正解のない答えです。その恐怖に対して解答を出せるのは舞ちゃん自身であって、私ではありませんでした。
他人ができるのは背中を押してあげることくらいでしょう。でも、どうやって押せばいいのかはわかりません。踏み出すことを恐れて立ち止まっているなら、突き飛ばすくらいの勢いで押してもいいでしょう。しかし今の舞ちゃんが、もし立っているのもやっとの状態なら、押しただけで倒れてしまうくらい疲れ切っているなら、それはできません。
倒れたら、起き上がる。それだけのことですが、たったそれだけのことが、難しいのです。
プロデューサーさんならどんな言葉をかけるだろうか。頭に浮かんだいくつかの言葉を慎重に選ぶ私の横から、小さくなったプロデューサーさんが顔を出しました。
P
「……泣いてるの?」
舞
「ううん、違うの。そうじゃなくて……なんでもないの。本当に、なんでもないことだから」
舞ちゃんがまた作り笑いを浮かべました。プロデューサーさんは「ふーん」というと、いきなり何を思ったのか、急に踊り始めました。
P
「ふーふふふん♪ ふーふふふん♪ ふふーんふん、ふんふー♪」
調子っぱずれな鼻歌です。リズムもおかしいし、ステップもへんてこでした。
でも、わかる人なら一目でわかります。それはさっきのライブ映像での、舞ちゃんのパートでした。
プロデューサーさんはひとしきり歌って、踊ると、楽しそうににへっと笑いました。
P
「お姉ちゃん、すっごくキラキラしてたよ!」
舞
「…………っ!」
舞ちゃんはその場でうずくまると、両手で顔を押さえました。
私は不安そうな顔で舞ちゃんを見つめるプロデューサーさんの肩にそっと手を置きます。
P
「お姉ちゃん、泣いてるの?」
ちひろ
「そうとも言えるし、そうでないとも言えますね」
P
「……どっち?」
ちひろ
「両方ってことですよ」
P
「???」
どんなに小さくなっても、プロデューサーさんはプロデューサーさんのままで――そんなこの人が愛しくなって、つい抱きしめてしまいました。
舞
「……ちひろさん」
うずくまったままの舞ちゃんが、低い声で釘を刺してきます。手で見えてないはずなんですけどね。恋する乙女は怖いです。
舞ちゃんは袖でぐっと目元をぬぐうと、しっかりとした足取りで立ち上がり、私に向かって手のひらを差し出しました。
作りものではない、本当の、心からの、笑顔で。
舞
「サインペン、ください」
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