過去ログ - 茄子「にんじんびーむ♪」
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15:名無しNIPPER[saga]
2016/12/31(土) 13:51:37.82 ID:tFwGSLOi0

「お、おもちゃ……ですよね?」

 奈々さんは何も言わずに、ニンジンを私に向けた。先端に小さな穴が開いているのを見て、反射的に身体が逃げる。尻もちをついた私に、奈々さんはにっこりと唇だけで笑いかける。

奈々
「本当に、凛ちゃんは勘がいいですね。野生動物みたいな反射神経です。……思い返してみれば、凛ちゃんだけは一度も死んでませんね。ああ、なら大丈夫かもしれません。イヴちゃんを待つ間、ナナのおしゃべりに付き合ってくれますか?」


「奈々さん、あの、おかしいですよ? どうしちゃったんですか? 言ってる意味が分かりませんし……と、とにかくプロデューサーを、こっちに渡してください」

奈々
「そうですね。おかしいんです。ナナはどうかしているんです。でも、壊れもしますよ。守ったはずなのに。救ったはずなのに。どうしてプロデューサーさんはプロデューサーさんをしているんですか? ずっと考えてました。なにがあったんだろうって。解けない問題を解き続けるのは苦痛でした。でも、ナナはいますっきりしてます。ようやくわかりましたから。ナナは確かに過去を変えた。未来を変えた。プロデューサーさんを助けた。幸せにした。なのに今現在が存在するのは、ナナが変えた過去を、未来を、元に戻した人がいるからでした。それは許されないことです。絶対に許してはいけないことなんです。ナナはもう嫌なんです。あんな光景を見るのは。あんな声を聞くのは。嫌です。絶対に嫌です。だから、修正します。今すぐできます。このニンジンをプロデューサーさんに向けて引くだけで、修正は終わるんです。でも、修正はいつでもできます。それよりもナナは確認しないといけないのです。数年後、あるいは十数年後、プロデューサーさんがどうなるか知っていて、どうしてこんなことをしたのかを。それを確認したら、すぐにでも修正します。現在の因果律がどうなろうとかまいません。そもそもこんな未来は存在してはいけないのですから」

 それは紛れもない狂気だった。どうしてこんなことになってしまったのかはわからない。正直に言うと、今すぐ逃げ帰ってしまいたい。でも、プロデューサーがいた。何も知らずに寝息を立てているあの人がいた。奈々さんが何を言っているのか、何をしたいのかわからないけど、とにかくプロデューサーを助けないといけない。

 私は立ち上がった。どうするべきかはわかってる。プロデューサーが教えてくれた。不安なとき、くじけそうなとき、心が折れそうなとき。そんなときはまず呼吸をする。それからイメージする。達成する自分を。成功する自分を。身体は心に従う。心は願いに従う。大切なのは強く想うこと。だから、できる。私は、プロデューサーを助けられる。

奈々
「凛ちゃんはすごいですね。普通の女の子なら立ち上がれないですよ、この状況。さすがシンデレラガールですね。奈々、凛ちゃんのこと大好きです。だから忠告だけはします。ナナはひどいことしたくありません。ですから、イヴちゃんが来るまで大人しくしててください。じゃないと、八つ当たりしますからね」


「……そんなので、私が怖気づくと思う?」

奈々
「ですよね」

 声は、後ろから聞こえた。目の前のソファには寝ているプロデューサーだけがいた。



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