20: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:47:19.00 ID:ZVvkRN9Y0
凛「さすが菜々さん。よくわかったね」
菜々「印象に残ってますからね〜。菜々は当時ベルリンの壁が崩壊する映像を見て、一つの時代の終わりを感じた物です……って菜々は永遠の17歳ですから、当時の事なんて伝聞でしか知りませんけど!」
凛「う、うん。そうだよね……」
21: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:47:53.38 ID:ZVvkRN9Y0
菜々「実はですね、当時の報道官の誤解が原因なんですよ」
凛「誤解?」
菜々「はい。東ドイツの報道官ギュンター・シャボウスキーが原稿にあった東ドイツ市民の西側諸国への旅行の“規制緩和”を“今から完全に自由化された”と誤解して報道してしまったんです」
22: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:48:23.90 ID:ZVvkRN9Y0
菜々「その夜のうちに数万人の東ベルリン市民が西ベルリンへ出国しました。そしてさらに、浮かれた東西ベルリンの市民はハンマーを持ち寄り、彼らの手によって分断の象徴であるベルリンの壁が壊されることとなりました。これがベルリンの壁崩壊の顛末なんですよ」
凛「すごいね……」
23: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:48:56.89 ID:ZVvkRN9Y0
菜々「はい、ささいな誤解が世の中を大きく動かすんです。でもあくまでこれはきっかけに過ぎなかったと菜々は思います。たぶんそこには蓄積されてきたいろんな思いがあったんです。だから人々は警備兵がいるベルリンの壁に向かっていけたんじゃないですかね」
蓄積か。今現在、アイドルとして輝いている菜々さんにぴったりの言葉だ
凛「なるほど……菜々さんの大人な物の見方にはいつもみんな感心させられるよ」
24: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:49:42.21 ID:ZVvkRN9Y0
菜々「だから、菜々は永遠の17歳で――」
客の来店を知らせるベルが鳴った。
25: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:50:24.50 ID:ZVvkRN9Y0
凛「文香」
文香は私に気付いていないようだ。
取りあえず私は“西ベルリン”とパーテーションを挟んで隣にあるテーブル席、”東ベルリン“に腰を下ろして文香を観察することにした。
26: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:51:12.19 ID:ZVvkRN9Y0
文香は読経をする僧侶の如く真剣な眼差しで、左手でお経の代わりに持った文庫本に目を通している。ちなみに右手には木魚を叩く代わりにティーカップが握られている。
……文香のストールが袈裟に見えてきた
文香は数ページ読むごとにカップを口へ運んでいる。
27: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:51:44.38 ID:ZVvkRN9Y0
文香は数ページ読んでは、空になったカップを口に運び、喉をならす作業を機械的に行っている。
中身の意味を問わず、プログラミングされた通りの行為を繰り返す文香は見ていて不安になる光景だった。
この作業は文庫本を読み終わるまでずっと続くのだろうか。
28: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:52:19.18 ID:ZVvkRN9Y0
『神様がくれた時間は零れる』
私の携帯から加蓮の歌声が流れる。私は電話をとった
凛「はい……うん、え、水着?また嘘じゃなくて?……いやそこまでしなくたって、はいはいわかったよ。それじゃあね」
29: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:53:12.97 ID:ZVvkRN9Y0
ありす「文香さん、ダージリン持ってきましたよ!」
ありすは”東ベルリン“にいる私の存在に気付いていない。そして”西ベルリン“にいる文香もまたありすの呼びかけに対して無反応だった。
しかしありすにとってそんなことは織り込み済みだったのだろう。
30: ◆SU.cErYd62[saga]
2017/01/03(火) 20:53:42.88 ID:ZVvkRN9Y0
そして文香は数ページ読んだ後、プログラミング通りにカップを口に運ぶ。
文香「熱っ……」
文香はカップをテーブルの上に置いて、俯きながら硬直している。
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