過去ログ - 終わらない物語が嫌いな僕と余命が短い女の子の話
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◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 17:22:24.00 ID:yOhGu/Zb0
「お久しぶりです」
「うん・・・久しぶり」
「髪、実は大分前から無かったんです。いつもはウイッグとかで隠してたんです。えへへ」
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◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 17:23:49.39 ID:yOhGu/Zb0
「ごめん、ごめんね」と彼女に謝った。
彼女の棒のように細くなった手足を、髪の抜けた頭を見た時点で涙をこらえるのに必死だった。なんで来なかったんですかとでも怒ってくれればいいのに、彼女は気にした様子もなく僕に言うから、涙が溢れてしまった。
「あらら、薫さんは泣き虫ですねぇ。よしよし」と言って彼女は僕のもとへ手を伸ばす。
力が入らないんだろう、彼女の手は座っている僕の上半身までしか上がらなかった。僕はその手を下ろし、両方の手で包んだ。
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94
:
◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 17:31:35.57 ID:yOhGu/Zb0
「私、お母さんとお父さんと仲直りしたんですよ。すごいでしょう」
「おばあちゃんに体調が悪くなったことを伝えたら、おばあちゃんが二人を連れてここに来たんですよ。
二人は私を見たとたん泣き出しちゃって。さっきの薫さんみたいに」と少し笑った。
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95
:
◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 18:41:16.39 ID:yOhGu/Zb0
「僕は君のことが好きだ。これから毎日君のところへ行く。だから、だから・・・」
死なないでくれ
「えへへ・・・ありがとうございます。毎日来てくれるんですか。嬉しいなぁ。
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96
:
◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 18:42:29.15 ID:yOhGu/Zb0
それから僕はほぼ毎日彼女のもとへ向かった。会うたびに彼女の祖母と思われる人に感謝を言われた。僕が勝手に来てるだけなので、と僕も毎回言った。
会うたびに彼女の様子は悪化していった。すでに彼女とは話せていないし、呼吸も苦しそうだ。
僕がいない間に僕とお揃いのクマを枕元に置いていたらしい彼女は、クマとともに寝ていた。
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97
:
◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 18:43:51.59 ID:yOhGu/Zb0
彼女がそう長くないことはわかっていた。本人もいつ死ぬかわからないと言っていたし。
けれども、こんなに突然訪れるものなのか。
大学の講義を終えて、急いで病院に行くと、彼女の周りを親類や医者、僕の両親が囲んでいた。
以下略
98
:
◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 18:45:34.35 ID:yOhGu/Zb0
彼女はまだ生きていた。近くにあったモニターを見る限り、まだ脈はある。
けれどもそれはひどく微弱なもので、おそらくもう少しで息を引き取るのだろう。
彼女の親類の人たちは泣いていた。母も泣いていて、彼女と一度しか会っていない父も涙ぐんでいた。
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99
:
◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 18:47:54.71 ID:yOhGu/Zb0
ねえ、芽衣。君の笑顔はもう見られないんだね。
「芽衣・・・」と呼ぶと、彼女はかすかに頭を動かし、僕と彼女のお揃いのクマの方に顔を寄せた。
モニターの波形は直線になっていた。
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100
:
◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 18:55:22.34 ID:yOhGu/Zb0
9月×日(日)
今日はかおるさんの家にお泊まりして二日目の日。お外をかおるさんと一緒に歩いた。
歩いてみると、たくさんの面白いものがあった。かおるさんも知らなかったカフェや、誰が使っているのかわからないほど古いバッティングセンターもあった。
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101
:
◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 18:56:29.66 ID:yOhGu/Zb0
それから私に、というよりかおるさんに向けて厄払いのお守りと恋愛成就のお守りを買った。
いつかかおるさんが好きな人が出来たら結ばれるように。それから、私が死んだ後、私の怨霊に取り付かれないように。なんて。
あと、可愛い服も買ってもらった!何回着れるかわからないけど、大切にしよう。
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102
:
◆eZMycVsOYY
[saga ]
2017/01/09(月) 18:59:40.63 ID:yOhGu/Zb0
9月△日(水)
最近かおるさんが来ない。やっぱりだきついたのがいやだったのかな。そういえば、お母さんとお父さんと仲直り出来たんだ!良かった。しぬ前に仲直りできて。最近はすこし、たいちょうがわるいから。
10月○日(月)
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