7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 15:26:00.78 ID:3OYwXlIW0
縋るような目で私を見上げるこの男は、織野工という。
高校二年生とは思えない童顔に、やたらと鬱陶しい前髪。
運動とは縁がなさそうな細身の身体は白く、見ようによっては女性的に捉えられるかもしれない。
私が高校二年生の頃、校内で冬休みの話題が盛んになってきたとき、彼は脈絡もなく、唐突にこの総勢一名の美術部に入部してきた。
動機はあなたのような絵を描けるようになりたいとか、展示されていた絵に惚れ込みました、とかだったような気がする。
あまり正確には記憶していてないのだけれど、とにかく必死そうに語るあの姿だけは、今でも忘れられない。
そう、あのときからだった。
私がこの男を──織野を壊してやりたいと思ったのは。
彼は私がこれまで出会った人の中でも、最高の素材だった。
純粋で濁りのない瞳に、素直な性格。なにかを作り上げるときのひたむきさと集中力。
中でも一番気に入ったのは、彼の手だ。
細くしなやかで長い指が鉛筆を包み、真っ白なキャンバスを塗り潰すべく、体格にしては大きな手が蠢いたとき、これだと思った。
私が探し求めていたものは、こんなに近くにあったのだと感じた。私は内心の高揚を抑え、平静を装いながら入部を許可した。
できることならすぐにでも人気の少ない廃墟にでも連れ込んで、滅茶苦茶に壊してやりたかった。
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