23:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/20(金) 00:46:53.02 ID:b4qt7MSMo
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放課後、生徒会もなかったので千歳と一緒に帰っていると、急ではあったが「ちょっと寄っていかへん?」と誘ってくれたので、そのまま千歳の家にお邪魔させてもらった。
たまにはこうして千歳の家に来るのもいいわねと言ったら、千歳は今日のお詫びがちゃんとしたいんだと言ってきた。そもそもボールがぶつかったことなんて覚えてもいない私は、そこではじめて「なるほどそういうことか」と合点がいく。
綾乃「歳納京子に、今日のことをどうやってお礼したらいいか、さっきちょっとだけ聞いたんだけどね……『そんなのいいのに』って言われちゃったの。まったく……私があのときどれだけピンチだったかわかってないんだわっ。消しゴム貸すのとはわけが違うんだから」
千歳「ん〜、まぁ歳納さんは綾乃ちゃんに比べれば忘れ物の多い方やからなぁ。綾乃ちゃんが感じたピンチとはその大きさが違うのもしゃーないんとちゃう?」
綾乃「でも……」
急須にあけたお茶っ葉にゆっくりとお湯をそそぎながら、千歳は言った。
千歳「たとえば……そう、綾乃ちゃんは覚えてへんかもしれんけど……今日のうちは、実は綾乃ちゃんに申し訳ないきもちでいっぱいの一日やったんやで?」
綾乃「そ、そうだったの!? そんな気にすることないのに……大丈夫だったんだから」
千歳「歳納さんにとっても同じで、きっと体操着のひとつ貸すことくらいどうってことなかったんやって。綾乃ちゃんは “借り” と思ってるかもしれへんけど、歳納さんは “貸した” とも思ってないかもしれん」
綾乃「んん……でもそれはなんというか、こっちとしては困るんだけど……」
千歳「ならそういうとき、綾乃ちゃんはどうするべきやと思う?」こぽぽぽ
綾乃「えっ?」
千歳は静かにお茶を淹れると、高そうな和菓子と一緒に小さなお盆にのせて持ってきてくれた。
千歳「せいいっぱいその子にお返ししてあげればいいんや。自分が納得いくまでな」ことん
綾乃「あっ、これ……! お濃茶フォンダンショコラって……ちょっと有名なやつじゃない? 見たことあるわ!」
千歳「実はこの前、お母さんがちょこっと帰ってきてここに顔出してくれてなあ。その時にお土産で持ってきてくれたんよ〜」
綾乃「おいしそ〜……でもいいの? こんな高そうなもの……」
千歳「本当はこんなんじゃ足りないくらいやねんで? 保健室で気失ってるときは、最悪記憶喪失まで覚悟したんやから……」
綾乃「私もびっくりしたわよ……起きたら千歳が泣いてるんだもの。でもまあ、そういうことならいただかない方が悪いわね」
千歳「そういうことや。ありがとなぁ」
私の言葉に落ち着いてくれたのか、千歳は少し肩の荷が下りたように安らかな笑顔を見せてくれた。
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