3:名無しNIPPER[saga]
2017/01/20(金) 21:03:38.02 ID:jvzcG60Ao
月が泣いた、と言ったのは誰であったか。
いつからか“月の涙”と呼ばれるようになったそれは、何の前触れも無く現れた。
それは完全な球体。
突如地球へと降り注いだ、月の裏側より出でた幾百もの黒い物体。
人工物であることは明らかだった。
世界各地に落着した球体を科学者たちは総力を挙げて分析しようと試みた。
が、すべては徒労。
あらゆるアプローチに対して球体は何の反応も返さず、
すべての科学者たちに、まさに謎の球体であると白旗を振らせた。
巨費を投じて研究機関に運ばれたものもあったが、
大半は落着した場所に放置されたまま、黙してただそこにあり続けた。
そして一年。
環境への影響もなく、それ自体が何も変化しないのであれば、
異物として日常に取り込まれていく。
地球崩壊の序章だと騒ぎ立てられたのも束の間、人々は球体の存在に慣れていった。
だが楽観的な適応能力は、ときに油断という後悔をもたらす。
宇宙規模の事象を前にして、それは人類にとっての命取りであった。
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