過去ログ - 女「また混浴に来たんですか!!」
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95:名無しNIPPER[saga]
2017/02/12(日) 04:15:18.23 ID:+Nlxqdvp0
親父「肩まで浸かれ」

男「はい……」

親父「100数えるまで出るなよ」

男「はい……」

親父「がはは。いい景色だねぇ。極楽極楽」

男「はぁ……はぁ……」

親父さんは温泉に入るのが好きだった。

足にも背中にも、刺青を入れていた。

禁止されていようが、周りに客がいようが、お構いもなく温泉に入りにいった。

客に通報されて怒り狂ったのを止めたことも何度かあった。

ただでさえのぼせている俺に、喧嘩の強い親父さんをとめられるわけもなく、だいたい俺が倒れ込んで事態を収束させるよいうことが多かったが。

親父「お前、女はいるのか」

男「いいえ」

親父「もしかしてあっちか?」

男「いいえ」

親父「何故つくらない?」

男「いや……」

親父「どうした?」

男「熱いっすね、ここ」

親父「誤魔化すんじゃねーよ」

俺は湯船に浸かることが苦手だった。

熱に弱い体質だった。

真夏に外を歩いている分には耐えられるのだが。

熱の篭もった車で運転されたら数十分もしないうちに必ず戻し(母に叩かれた)、体育館で校長先生の話が長引いた時に立ちくらみをして倒れたことも何度かあった(保健室の先生には殴られなかった)。

病気というわけではなく、単に、極度に苦手なのだった。

強い体躯に生まれた代償なのだろうと思っていた。

それならせめて家庭環境の代償に大きな幸福の1つや2つを与えてくれとも思ったが。

風呂好きな親父さんがあがるまでは、俺はあがることができなかった。

母親代わりの父親という存在を前にして、俺はまたしても、"耐える"という手段で愛情を得ようとするやり方しかわからなかったのだ。

親父「情けねぇやつだなぁ。だったら、今夜はお前に女を教えてやろう」

男「いいですよ。お金持ってないですし」

親父「おめぇは払わなくていいんだよ」

俺はこんな形で女を知りたくなどなかった。

"初めては、好きな人と"

そんなセリフを、この俺が、この親父さんに到底言えるわけもなく。

とっくに100秒以上湯に浸かったあとのサウナにも、初めて味わう女の艶めかしい男として最高の感触にも、じっと耐え続けたのだった。


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