過去ログ - 海未「・・・・・そうなんです」
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50: ◆LXjZXGUZxjdx[sage saga]
2017/01/25(水) 14:20:44.04 ID:2QzEDCRD0

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時計台 2階



穂乃果「この機械はなーに?」

海未「時計装置と書いてありますね。んっ?! 1881年当時のままの機械だそうですよこれ」

ことり「すごいねえ。スマホなんかは数年で壊れちゃうのに、この機械は130年以上も動き続けているんだ」

海未「ええ。悠久の歴史を感じます」



テクテク



おじいさん「どーも、こんにちは」

海未「はい? あの・・・?」

おじいさん「私はここでガイドをやっています。何か分からない事などありましたらお答えしますよ」

海未「ああそうなんですか。あの、この時計装置は本当に130年以上前から同じの物なんですか?」

おじいさん「ええ、そうですよ。130kgの重りを毎日人が巻き上げて、それが落ちていくエネルギーで時計を動かしています。これは当時の明治時代と全く同じ機構なんです」

海未「すごい年月です。よく今まで無事に残っていられましたね」

おじいさん「取り壊されそうになった時もあるんですよ。例えば戦争の時。戦争が始まると鉄が不足してねえ。それで日本軍は各地から鐘やらなんやらを壊して鉄をかき集めたんですよ。それで、時計台にも目を付けた。でも、今もこうして残っている。当時の日本軍は時計台は壊せなかった。何故だと思います?」

海未「うーん・・・。やはり当時の人達にとって時間を知るために時計台が重要だったからですかね?」

おじいさん「いいや。当時の軍は勝つことが優先でそんなこと考えなかったと思いますよ。時計台を取り壊さなかった理由はね、ここに天皇陛下がご来訪されたことがあるからなんですよ」

海未「ああ、なるほど。明治時代から天皇陛下は現人神であり日本を統治するご存在でしたよね」

おじいさん「その通り! だから、日本軍は天皇陛下がご来訪したという事実に恐れ入って、時計台には手を出せなかった。そのおかげで、途中何度か改修はしたものの、今日までこの時計台の形を残すことができた訳ですな」

海未「そのような歴史があったのですね。あのっ、それと関連して少し気になったのですが―――」

おじいさん「はいはい、なんでしょう」


・・・・・・・・・・・・・


おじいさん「当時の日本は明治維新が行われた直後で、刀を取られて生き方を見失ってしまった侍が多かった。クラークはその人達にバイブルを見せたんです。バイブルって分かります?」

海未「聖書ですか?」

おじいさん「そうです! クラークはアメリカ人なので、キリスト教。キリスト教の教えを、生き方を見失ってしまった人に説いたわけですよ」

海未「しかし、日本と言ったら古来より八百万を信仰する神道ですよね? それを国教とした明治政府は、キリスト教を広められたら快く思わないのでは?」

おじいさん「その通り! 日本は神道。キリスト教なんか広められたら、政府は困る。しかし、北海道の開拓を進めるためにはクラークの力も必要。だから、多少のことは政府も黙認していたようですよ」


・・・・・・・・・・・・・


海未「クラークはアメリカ人ですし、日本語は当然話せませんでしたよね。それに当時の日本人は開国したばっかりで外国人に慣れていなかったと思うんですけど、生徒達はクラークとギスギスした関係にはならなかったのでしょうか?」

おじいさん「ええ確かにそれはありました。異邦人であるクラークは生徒からあまり信頼されていなかった。そこでクラークは生徒達からの信頼を得るために色々なことをしたんですよ」

海未「色々なこと?」

おじいさん「例えばこんなことがあった。クラークはお酒が大好きで、アメリカからおいしいウィスキーを持ってきていたんです。あなたにはまだ分からないかもしれないけど、お酒ってのは嫌いな人がいないほど、おいしい飲み物なんです。ですがそれを生徒達の目の前で割ったんです。そうしてアメリカに帰るまで禁酒を宣言したんです」

おじいさん「他にも木の上の方に生えているコケをサンプリング―――採取するのことなんですけど、大人が背伸びしても届かない高いとこにあるコケを目の前にして、クラークは生徒達にこう言ったのです」

おじいさん「『私の背中に乗ってあのコケを取りなさい』・・・と。それでクラークは木の前で前かがみになったんです。当時のクラークは50歳くらい。生徒はほとんどが年下なのにです」

おじいさん「そんな風にクラークは自身をサクリファイス―――犠牲にし、そんな決意にあふれたクラークを目の前にして、生徒達はどんどんクラークを信頼していくんですね」

海未「政府に雇われた外国人のクラークですが、そこまで日本人のために尽くしてくれたのですね。すごい方です」


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