16: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/10(金) 21:00:36.83 ID:TTAc4R6C0
もともと人とあまり話すことのなかった未来人は、まだ進級したばかりのクラスで、浮いたモノ扱いされるのは当然のことだった。
それに加えて、事件のあった次の日に朝から来ていなかったこともあり(人が集まる前にどこかへ消えていた)、それを証拠として、教室の空気は彼女を犯人とする方向でほとんど決定していた。
……これはこの時の私の立場だからそう感じたのこもしれないけど、
まだ仲のいい人も定まっていないような時期に、発言力のある人に異議を唱えることは、誰にもできなかったことのように思う。
その日は確か、未来人は4時間目あたりに戻ってきた。
気付かなくなったわけではないだろうけど、周りが向けた白い目線を、特に気に病んでいる様子はなかった。
昼休み、未来人と少し話そうと思い教室を見渡すと、彼女の姿はもうなかった。
まだ群青色が残っていたので、少し前までは教室にいたようだ。私は香りをたどって、廊下を1人で歩く。
案の定、私は屋上の扉の前にたどり着いた。けど、私は鍵を持っていない。どうしようかと二の足を踏んでいると、カチャリと小気味のいい音が鳴った。
冷たいドアノブを回してみると、当たり前のように開いたので、身体が前に傾いてしまった。
昨日と変わらず、汚れたままの屋上。
「登っていいよ」
頭の上から声がしたので、私は塔屋の裏側へ回りながら尋ねた。
「どうやってそこから鍵開けたの?」
塔屋の上のスペースから鍵穴まで、身長分は距離があるはずだ。手を伸ばして届く長さではない。
「足ひっかけて、ぶらさがった」
長い髪を垂らして、逆さまにぶら下がる未来人を想像する。
「危ないよ」
「自分は平気」
中学生になると、彼女は曲芸師のような動きもできるようになってきていた。
「怪我したら、不便だよ」
「ふぅん」
私は錆び付いたはしごに手をかけて、体をぐいっと持ち上げた。鉄の薄い赤の匂い。
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