過去ログ - 未来人「ここにいるよ」
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28: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/10(金) 21:14:21.34 ID:TTAc4R6C0

 私はゆっくりと、ほかの人に悟られないように、視線を東田の方に動かした。
 未来人の席が視界に入ったけど、彼女はここにはいない。

 東田が視界に入ると、一瞬視線が合ったような気がして身が縮こまったが、すぐに気のせいだとわかった。
 薄紫は立ち上がり、教室の視線を集めてから、岡西に尋ねた。

「岡西くん、園芸部のクワ、最近使った?」

 会話のいきさつを見守るように、誰かがごくりと喉を鳴らす。

 岡西は一瞬、視線を右上に揺らしてから、それから、短く答えた。

「使ったけど」

 教室は爆発したように騒がしくなった。まるで火事でも起こったかのような喧騒。
 突然、祭りの中に放り込まれたような錯覚を覚えたのを覚えている。

 しばらく唖然としていた岡西も、周りの様子を受けて、よくない状況にいることに気づき、逃げるようにして教室を飛び出した。

 何人かがその後を追おうと扉に向かうと、まるで初めから入り口にいたかのように、ひょいと未来人が現れて、道をふさいだ。

 目立ちたがり屋が未来人の横をすり抜けて行こうとすると、未来人はぽつりと、

「先生、階段登ってきてるよ」

 所詮中学生である。

 その一言で、目立ちたがり屋たちは諦めて、東田の「みんな、席に着いておこう」という呼びかけで、先生が来る前には、全員が着席していた。

 先生は岡西とは鉢合わせしなかったようで、特に変わったことはなく、普通に朝の会を終わらせた。

「中庭には近づかないように」

 未来人の方を見ると、彼女は、頬杖をついて、窓から空を見上げていた。


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