27: ◆zsQdVcObeg[saga]
2017/02/10(金) 21:12:57.07 ID:TTAc4R6C0
岡西は、少し驚いた様子を見せた後、いつも通りの調子で扉を閉めて、黙って自分の席に向かう……向かおうとしたところで、まだ入り口近くにいた滝野が、震える声で岡西を呼び止めた。
「……ね、ねぇ」
「……なに?」
私はそこで、中学校に入って初めて岡西がクラスメイトと話しているのを見た。
教室全体が、次に発せられる一語一句を聞き逃さまいとするように、じっと2人のことを見つめる。
手に汗を握ってしまうような雰囲気で、私も、身体を教室の後ろへ向けて、ほかの生徒と同じように、静かに2人の方を見ていた。
「な、中庭の……かっ、カメは……」
滝野はただでさえ落ち込んでいたのと、30人近くに一斉に視線を向けられていたので、緊張して震える声を絞るようにして、岡西に何かを尋ねようとしていた。
「……中庭が、どうかした?」
岡西はたった今学校に来たようで、中庭でなにが起こったか知らないようだった。滝野は次に続ける言葉が見つからないようで、口の端をキュッと結んでもごもごとしている。
じれったい雰囲気の中、誰かが滝野の代わりに聞かなければ、という空気が生まれ、目立ちたがり屋を含め、生徒たちは互いに視線を押し付けるように隣の人の顔を見ていた。
岡西はなにがあったのか全く知らないので、ただその場に突っ立って困惑している。
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