過去ログ - 武内P「女性は誰もがこわ……強いですから」
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169: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/03/03(金) 20:41:53.47 ID:cn/ymcwe0
日野さんと目が合います。
彼女は最初から私を見ていました。
以前として減速する気配がまるでありません。
むしろ目が合ったことで加速したようにすら思えます。

避けるという選択肢が一瞬頭をよぎりましたが、それで日野さんが転んで怪我でもしたらと考えると死んでも死にきれない。
あの小さな太陽のような突進を、受け止めるしかないのです。

彼我の体重差は倍以上。
しかしあの突進の勢いはそんな数字を吹き飛ばすに余りある。

足を肩幅に開きつつ、右足を後ろにずらして腰を落として前傾姿勢をとる。
肩の力を抜き、深く息を吐く。

私の構えを見て、受け止めてもらえるとわかったからなのか。
日野さんの燃える瞳がいっそう輝きを帯び――


「プ、ロ、デュ、ウ、サアアアアアアアアアアアアアッ!!!」


まだ距離は3メートルほどありました。
それなのに日野さんの両足が地から離れます。
放たれた矢のように、私のずっと下からタックルが迫りくる!

そのままぶつかられると思っていたので、この角度は予想外でした。
下手に踏ん張って受け止めれば腰かアキレスを痛めかねません。

日野さんの小さくて熱い体が触れると同時に、彼女を両腕で抱きとめながら足から力を抜き、勢いに逆らわず倒れます。
腰から倒れ背中がついても勢いはまだまだあり、廊下を滑ることとなりました。

背中に摩擦熱が起きますが、こんな熱を彼女の素肌に味あわせるわけにはいかないと必死に抱き留めます。
数メートルほど滑ったところで勢いが収まり、安堵の息が漏れました。


「日野さん。このようなことは危険なので二度と――」

「プロデューサー! 大丈夫でしたかプロデューサー!?」


注意しようとした矢先、日野さんは私に抱え込まれた体勢のまま心臓の音を確かめるように胸に顔を押し当てながら大声で、それも震えた声で問いかけます。
よく見れば目じりに涙のようなものが見えました。
今ので私にケガをさせたのではないかと心配している……にしては大げさです。

考えてみると最初からおかしい点はありました。
日野さんはテンションがあがると私の注意を忘れて、抱きついたりタックルをすることは度々ありました。
しかし今のように、事故になりかねない勢いでタックルをすることなどありえません。
よほどのことがあって混乱しているように考えられます。


「良かった……ッ! 動いています、ちゃんとプロデューサーの心臓がバクンバクンと動いています!!! ウオオオオォ、良かったああああああ!!!」

「あの……日野さん?」


私の胸から顔を離したのはいいのですが、今度は馬乗りになったまま両の手を天に突き上げ漢泣きを始めてしまいました。
まるで私が死ぬかそれに近い状態だったと思い込んで――


「本当に、本当に良かったです! 結婚詐欺にあってお尻の毛までむしり取られて、内臓という内臓が売られて蟹漁船に行く手続きが済んだと聞いた時は生きた心地がしませんでした!!!」


――話に尾ひれがいくらなんでも付きすぎではないでしょうか?


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